百怪談    鬼尽くし All sorts of orge


 とても暑いある夏、猪が  田畑を荒すので 山狩りをしました。兎2羽と 猪1頭が 捕れ 7匹の瓜坊が 付いて来ました。それを 祝って 三谷の青年団の者達が 集まり 野呂の墓場で 宴を開きました。月の無い暗い暑い日だったので 暑気払いに「百怪談」しようとしたのです。俄Niwakaオクドを 作り、手持ちの酒と5本づつの蝋燭Rousokuを 持ち寄り 猪鍋Sisinabeと 兎鍋を作 り 賑やかな 時間を過ごしました。充分に酔って 出来上がると 肝煎が 座の中心に 100本の灯心Tousinを 囲み 青い紙を 貼った 大きな行燈Andonを 置きまました。青い光が人の顔を 照らすだけでも 不気味な雰囲気に 成ります。世話役が1つ目の話をしました。「昨夜、高梁Takahasiで 飲んで帰りょうたら、桑の実がなっていたんで 取って食べたんじゃ  わしぁ糖尿病じゃろう  寿命が 縮むんが 怖いんじゃ  明庵栄西禅師が 言うにゃぁ 桑ぁ 糖尿病に 効くし、寿命を長くする言うけぇ、もう夢中で 食うたんじゃ  口の中も 唇も 真っ青に 染まったんじゃ  おまけに 採る時 熟れた実が 頬に触れたんじゃ そんな事ぁ知らんけぇ 機嫌よぅ家にいんだらのう  家に帰るといきなうIkinou お上さんが 鬼の顔をして 怒たんじゃ  訳ぇ聞いたら、わしが 浮気して 口紅ぃ 頬に付けていると 言うんじゃ  誤解じゃと 事情を話すと 女将さんは 栄西さんは 実じゃのうて 葉が効くんじゃと言ぅとるんじゃ  口紅の色ぅ桑の実の色で 誤魔化そうとしている 言うて 未だに 許してくれんのじゃ  桑葉良  桑原 」と 言うと 皆は「お前の神さんは 荒神か」と 笑い合いました。 肝煎りが 次の話し手の「下」の者を 指名し 1本 灯心を 消しました。2番目の男は「肝煎も 浮気の話かぁ  俺も 高梁で飲んで、小股の切れる姉ちゃんに 色目ぇ使われ ちょびっとばぁ浮気したら お嬶Okaaは 変な病気にかかっとっちゃぁおえんと 言うて 医者に行こうと 言うんじゃ  仕方なかろう 渋々医者に付いて行くと お嬶は医者と何やら相談しとった  医者が なにやら引き留めとった  気になるけぇ 盗み聞きしたんじゃ  そしたら どうやら俺のおちんちんを 切り取ってくれと 言うとる様なんじゃ  医者が 必死に説得してくれたんで  結局 必要じゃけぇ切り取らん事になったがのう  嫉妬の鬼じゃ 慰藉様々じゃ 医者様々じゃ  じゃが 医者は どっちに 同情したんかのぅ」と 言うと またもや 大喝采で 1本 灯心を 消しました。3番目の中倉の男は「墓場で 鬼ごっこをしたんじゃ  鬼になった奴が 追いかけよう  墓ぁ一回りすると 本物の赤鬼が現れて 食いついてたんじゃ  食い付かれた奴が 赤鬼になって 追い掛けるんじゃ  そして 次の者も 食い付かれて 赤鬼になったんじゃ  次々 食い付かれ 皆 赤鬼になってしまうたんじゃ  最後の赤鬼が 鬼になって 他の赤鬼に サバリ付き血を吸うと 食い付かれた奴ぁ 血の気ぇ失ぅて 顔面が 靑ぅなって 青鬼になったんじゃ  そいつに 血を吸われた奴も 青鬼になったんじゃ  最後の青鬼が 血ぃ取り戻そうと血をすうたんじゃが は 貧血は 治らんかった  吸われた奴は 顔面蒼白の白鬼になって 血を取り戻もどそうと 朦朧としているんを 堪えに堪えて 他の鬼ぃ 追いかけ やっとの事で さばり付いて 血を吸ったんじゃが 激しい運動に耐えられんで 死んだんじゃ   吸われた奴も 血を取り戻そうと 貧血を堪えに堪えて 他の青鬼にさばり付いて 血を吸ったんじゃ  じゃが やはり死んだんじゃ  ついには貧血で 皆 死んだんじゃ」と 言うと 新宅の者が わしも 鬼の話をすると 言って 立ち上がりました。「昔 竹部に 銅山が 有って そこで働く出稼ぎの作業員に百目鬼鬼六Doumeki-Onirokuちゅう(言う)男が おって 鬼突きちゅう所に 仮小屋ヲぁ 建て住んでおったんじゃ  飢饉が 始まると 鬼の祟りとちゅう事になったんじゃ  子供達ぁ 鬼六の息子の福男を 苛めたんじゃ  鬼ごっこの時ぁ[福男ちゅうても鬼に衣じゃ]と 鬼にされたんじゃ  せぇでも 鬼の目にも涙で 遊びに入れてもらえたんで嬉しがると[鬼も笑顔じゃ]と 鬼の首ぅ取った様に いらまかし(からかっ)たんじゃ  福男ぁ[鬼の中にも仏ぁおる  渡る世間に鬼ぁ無しと 言うけぇ 今年の飢饉が 終るまで 我慢しょう]と 思ったんじゃが、翌年も 飢饉じゃった  福男a ますます虐められ田でんで[鬼も頼みゃぁ人食わぬ]と 言うじゃろうと言うと[鬼と戯れ事じゃ]と 言って 気色悪がられたんじゃ  翌年も 飢饉じゃった [知らん仏よりゃ馴染みの鬼  鬼も角折るとも言うし 来年の事ぅ言うたら鬼が笑うと 言うけぇ 先送りし 我慢していたが あの鬼の家族がおるけぇ不幸が 続くんじゃ  村から追い出そう 鬼を一車に載No訳にゃぁ行くまい  心ぅ鬼にするしかあるめぇ]と 言うて 村八分のように 扱ったんじゃ  村人が 辛く当たるんで この家族ぁ耐え切れんで 森の中に引っ越すと[鬼の念仏じゃぁ  鬼の居ぬ間の洗濯   鬼が居ぬ間に洗濯じゃぁ  鬼の空念仏  鬼の一口ぁ避けられた  鬼の目にも見残しと 言う事もあるけぇ 気ぃ抜くまいぞ]と 村人ぁ 話し合うたんじゃ じゃが この年も 物凄ぇMongee 飢饉が 続いたんじゃ  それまでぁ 長雨による冷夏が  原因の飢饉だったんじゃが この年ぁ旱魃Kanbatuじゃった  水ぁ百目鬼の家族の住む山から チョロチョロ流れる位で、池も 沼も 川も 涸れ果たんじゃ  [鬼の寝る間に 山の水を盗んで来ようか  鬼ぅ酢に指しSasiて食えるんか  いんにゃ鬼ぅ酢にして食える程 鈍感じゃあねぇ」等と等と 話会うて[恐てぇが 仕方がまい]ちゅう事で 鬼六に 水ぅ分けて貰う事になったんじゃ [あれだけ 苛めたんじゃけぇ 姉姑Ane-Syuutome鬼千匹  小姑ぁ鬼十六に向かう  嫁に小姑鬼千匹と言うけぇ 小姑みてぇに ネチネチと 仕返しされそうじゃ]と 皆 尻込みしたんじゃ [どいつもけぇつも 鬼の霍乱Kakurannじゃのう  鬼がでるか蛇が出るか]わし が 山の水ぅ 分けてくれるよう 頼みに行って来らぁと 勇者が現れると[鬼の起請Oni-no-kisyou-mon見てぇに 勢いが良いのう  鬼が住むか蛇が住むか わしも てごをしに 乗って(いしょに)行こう」と 言う者が  現れると、勇者は[お前も 連れのうて来てくれるのか  鬼に金棒じゃぁ あいつの息子ぁ お前ん所Tokoの娘に 気が有った様じゃけえ  鬼も18番茶も出花じゃぁ  鬼瓦にも化粧じゃぁ よう磨いておけぇ それに お前の娘も 福男に色目ヲぅ使っておったのう]と 言うたんじゃ  鬼に金棒の男が[わし娘ぁ 別嬪じゃ  鬼瓦じゃぁねぇ  少なくとも 福男はそう思うとる]と 反論すると、勇者達は[別嬪談義ぁどうでもえぇが  鬼に瘤ぅ取られるような結果になりゃぁ 良いがのう]と 相談が まとまって 二人ぁ山に向かったんじゃ  当然ながら百目鬼の家族は 断わったんじゃ  勇者が[百目鬼の家じゃぁ 節分の豆撒きの時〔福は内 鬼も内〕と 唱えて 豆を撒いておった  今年ぁ 村中の豆蒔きにゃ お前の娘ぅ先頭にして〔福は内 鬼も内〕と 百目鬼の家族に 聞こえるよう 大きな声で 唱えて撒こう]と 言うと「そりゃあ良ぇ  そりゃあ良ぇ」と 言う事で 村中の節分を 無事終わると、百目鬼の家族ぁ 里に下りて来て 話し合いに 応じ 水ぅ分けてくれたんじゃ  その年ぅ 最後に 飢饉の心配ぁ のうなったんじゃが 時が 過ぎ 福男と娘が 結婚すると 百目鬼の子孫は 竹部から故郷に 戻っていったんじゃ」と 話しました。この後も 話は続きました。「三谷野呂の百怪談」  鬼に衣:「善人面しているが、本当は 心が 鬼のように恐ろしい」の意味では ありません 「裸で暮す鬼には 衣は 不必要な物」と 言う意です 鬼の眼に涙:「鬼が悔しくて泣く」の意味では ありません 「鬼のような心の持ち主でも、場合によって、惨めな者を哀 れむ事が有る」と 言う意味です 鬼も笑顔:「鬼が苦笑いや 作り笑いをする」と言う意味では ありません  鬼のように 恐ろしげな 醜い顔の女でも、笑った時は 愛嬌がある」と 言う意味、あるいは「鬼のように 凶悪なのに、人前では 笑顔を見せている」と 言う意味です 鬼の攪乱:「鬼に攪乱されて 怖気付く」の意味ではありません 「普段から健康で 病気しない人が、珍しく 病気をする  普段から 元気な人が 元気を失っている」と 言う意味です 最上稲荷神社:北緯34度42分20秒東経133度50分8 票病 「鬼は内」と 唱えて豆撒きします  鬼のような人も 死後は 仏になるので この世に 鬼はいないとの思想のようです  怖い話:100話の怪談話・百物語hukumusume.com/DOUWA/pc/100monogatari/index.html」「特選!怪談百物語 | 怖い話・都市伝説大好き人間、集まれ!稲生物怪録  平成22年年(2010年)2月9日