加茂川 嘘つき狐 Fox who tells lies


 尾原の少年が 旭川ダムまで 魚釣りに行くと、沢山の魚が 堰の流れに 群がっていて 良く釣れました。釣果Tyoukaに 夢中になって 釣り場を 流れに沿って あちこち変えている内に、何処Doko(北緯34度54分54秒東経133度50分57秒)にいるか 解らなくなってしまいました。とりあえず 本宮山を 目安に南 西に向かうと、こんな寂れている所(北緯34度54分38秒 東経133度50分41秒)に 人等いないと 思いましたが運の良い事に 人がいたので 道を尋ねました。その人は 親切そうに「雲行きが怪しい  雨にならないうちに帰りんせぇ  尾原に行くにゃぁ 右に行きなされ」と  教えてくれました。右に行くと 足音が 後ろから聞こえ 次第に近付き「魚ぁくれぇ」と 言うのです。恐る恐る 後ろを見ても 誰もいません。気持ち悪くなったので 言われるままに 魚を一匹 道に放ると 足音は 立ち止まりました。又 暫くすると 足音が 追い付いて来て、また「魚ぁくれ  魚ぁくれ」と 言うのです。また魚を 放ってやり 急いで 暫く道を進むと、また、足音が 追いかけて来ました。又  又「魚ぁくれ  魚ぁくれ  魚ぁくれ」と 言うのです。こうしている内に、全部の魚が なくなりました。「お爺ちゃんが 言うとった  狐ぁ好物の魚ぁ 持っとると 盗むそうじゃ  狐が 出そうな処じゃけぇ あの人ぁ 狐が 化けとるんじゃ無えかのう」と 不安になりました。

雨も降る事はなかったのですが、先に進む道が 行き止まり(北緯34度54分48秒東経133度50分28秒)になって しまいました。仕方ないので引き返しましたが、先程 投げたはずの魚が 見当たらず、食い散らかされた 骨が 所々に 散らばっていました。迷い迷い やっとの事で 元の所に戻ると、さっきの人がいて「悪ぃ うっかり反対方向を 教えてしもうた こっちへ行きゃぁ 三谷の方じゃ  その先で 誰かに 道を聞きなされ」と 言うのです。ゴンゴン行くと 人に会う事もなく やっぱり道(北緯34度54分33秒東経133度50分32秒)が 途切れてしまいました。「狐ぁ 道ぅ隠すと お爺ちゃんが 言うとった  あの人ぁ きっと狐じゃ」と思 いながら 道に 迷った元の所に戻り 右に 旭川ダム湖に沿って 進むと 途中 左に 橋が ダムを 渡して架かっていました。「なんだ旭川ダムに 戻ったじゃぁないか  川に沿って進もう」 と 思いましたが 自信がないので、止む無く 元の迷った所に 帰って見ると またあの人がいて「橋があったろう  渡りゃぁ 三谷の方向じゃったのに」と 言ったのです。戻って 橋を渡り 旭川に沿って 南東に進むと 村(北緯34度54分26秒東経133度51分55秒)があったので そこにいた人に道を 尋ねると「三谷や 尾原方向は 反対方向じゃ」と 言いました。「あの男は 嘘ばかり付く」と 気付いたのです。「狐の言う事を聞けば 化かされる」と お爺ちゃんが 言っていた事を 思い出しました。「彼奴は 狐じゃ  彼奴の言う事の逆をしょう」と 考え、もう1度 狐に 道案内させようと 決め 橋に戻り 元の所に帰ると あの人が居ませんでした。再び本宮山を 目安に進むと まだ行ってない道(北緯34度54分27秒東経133度50分39秒)がありました。その道を 進んで見ると 字路(北緯34度54分28秒東経133度50分31秒)があり 左に向かう枝道がありました。そこには 煙草Tabakoを 燻よらしてKuyorasiteいる 姉さん被りの目の切れ上がった 細身の女がいて「右の道には 妖怪がいます  牛も 馬も 犬も 恐ろしくて良う動きません」と 優しく言うのですが、良くお姉さんを 観察すると 人間離れして 顎が 細いのです。「優しさに 騙されちゃぁいけん」と 思い、その言葉を 無視し 左に 曲がりました。神瀬Kanse辺りと思われる所で「新品の青畳は 良いのう」 と 話し合いながら 小便臭い酒に 馬糞臭い肴(Sakanaで 酒盛りし 温泉気分で 泥田に入っている  遍路姿の老人達が 騒いでいました。農婦が 現れて「見なされぇ  狐に騙された哀れな人達じゃ  こっちの方向にゃぁ 大入道が待っている  今度の田圃の畔を 左に行きなさい」と 言うのです。中年肥りの農婦にしては 腰回りの 括れが美し過ぎです。無視して 直線の道に 進む と三叉路(北緯34度54分16秒東経133度50分43秒)が あり 毛むくじゃらの 修験者らしい格好をした男が、石に座っていました。杖を 掲げて「尾原なら 大山道の道標Mitisirube通りに 右に行きなされ」と 指図するのです。確かに  道標らしき物が あるのですが、刻まれた文字は 風化していて読み取れません。「ただの石じゃないか  狐は  三叉路があると 騙して 池や川に落ちる道を教える」と おじいちゃんから 聞いていたので 用心すると その道はどう見ても 本宮山に向かっているように 思えました。お爺ちゃんから「狐は 山に誘い込んで 同じ道をグ ルグル回す」と 聞いていたので「こいつも狐じゃ  深山に 誘い込もうとしている  それに 左に直進する道は 旭川に向いている」と 思い、これも 又 無視して 後戻りし 元の二股に 分かれた所に出、未だ 行っていない西に 向かう道に 入りました。右手の先で 何者かが騒いでいます。竹井直定らしい恰好で 軍配をしきりに 左に振って 部下達に 新山城突撃を 命じています。「あの裏切り者め  きっとそいつ等も 狐じゃ」と 思いそのまま進むと、新山兵庫の恰好の男が「摩利支天のお告げじゃ  右に輝元がいる  隆景がいる  元春がいる」と 繰り返し言っています。成る程 摩利支天社らしき小社が そこに祀られています。「そうか ここは舟ヶ乢(北緯34度54分17秒東経秒133度49分40秒)じや  ここからは 左へ回ればよいのか」と 思って進みました。すると化気神社への道標が ありました。狐も うまく騙せなくなったので「嘘を見抜かれている  それなら本当の事を 教えて 嘘と思わせ道に 迷わそう」と 思ったので、狐は 本当の事を言い出しました。道標のお陰で 進むべき方向が 解ったので 狐の作戦変更に 気付き 不安な分かれ道に出た時は、狐の言う事を 聞きました。円城に 向かってると 猪が掘った穴で  ヌタうつ修行僧や 田の上を燕になって飛んでいるつもりの少年がいました。円城から 上田に向かうと 道端の二股の枯れ木に 必死にお祈りしている婆さんや 常夜灯と 藤八拳Touhati-ken(狐拳)に 興じているお爺さんがいました。上田から 三谷に向かうと 切り株を挟んで 囲碁だ か 将棋だかをしている若者達や 独り相撲を取っている力士がいました。大木に  抱き付き愛を語っている娘や 豊かな胸とお尻を出して腰を振って歩いている小母(obaさんや 集団で 太鼓や 笛や 踊りや 歌に没頭している 集団 等がいました。いずれの人も 幸せそうにしているので、怖さ等なく 可笑し)みを 以て見ていられたのです。それで 新山に無事に帰れました。「多数の狐に化かされた話 それぞれの地区の村人より口伝」を 基にした物語    本宮山:神瀬 上田東北緯34度54分13秒東経133度50分44秒 旭川ダム:建部町鶴田 北緯34度54分49秒東経133度51分24秒   新山城:北緯34度55分8秒東経133度45分27秒    化気神社:案田化氣山 北緯34度54分19秒東経133度49分22秒    毛利輝元 小早川隆景 吉川元春:毛利両川・一毛両川 毛利元就の3本の矢 竹井直定:備中松山城戦で三村氏を裏切り毛利軍を城内に誘導しました。加茂川合戦に参戦し、加茂崩れした毛利軍の勝山城に在番しました 新山兵庫:加茂川合戦の折りの毛利軍本陣を 壊滅させた虎倉城方勝利の第一の功労者ですが 戦後なぜか新山城から有漢に追放されました     平成23年(2011年)10月21日

 

訂正29年(2017年)3月31日に【岡山「へその町」の民話-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利 吉備中央町図書館 吉備人出版】が、2019年3月31日に【岡山「へその町」の民話-岡山県吉備中央町の採訪記録  立石憲利 吉備中央町図書館 日宝綜合製本株式会社】が発行されました。狐に騙された話が多く載っています。P220~P274に「油揚げを取る「」魚を取る」「ローソクを取る」」「提灯を消す」という物語が載せられています。 平成31年(2019年)3月31日に【岡山「へその町」の民話-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利吉備中央町図書館 吉備中央町教育委員会】が発行されました。p43に「違う道を教える」と言う記事が載せられています。p47~P48に「油揚げを取られる」の記事が載っています。

 

 

三谷 日名    肢が竦んで動けん Unable to move because too frightened


 昔 ある少年が 兄ちゃん(あーちゃん)と 呼んでいた 年の離れていない 叔父さんに 連れられ、本宮山に お参りして帰る時 道に迷いました。狐に 騙されて変な事をしている人達が あちこちにいました。2人は「怖い怖い」と 言いながら、ひょうきんな人達を 楽しく見ながら 帰り道を 探しながら 道を急ぎました。すると 隣村のお姉ちゃんが 狐に騙され 大きな木に 抱き着いて 愛を語っていたのです。着物は 開けHadake 太腿や 項Unajiや 胸がチラチラ見えています。兄ちゃんは 少年の眼を 手で塞い「見ちゃぁおえん」と 言いましたが そこから 動こうとしません。「兄ちゃん どねぇしたん」と 尋ねると、兄ちゃんは「狐の仕業じゃ   恐とうて 足が竦んでSukunde歩けんのじゃ」と 答えました。目を覆ってくれているお兄ちゃんの手は 震えていましたので、少年は お兄ちゃんが本当に怖がっていると思うと  恐ろしくて足が竦み、お兄ちゃんが 満足げに手 を引いて帰ろうとするまで  動けませんでした。「著者体験談」

平成23年(2011年)10月21日

 

 

五欲の狐 Fox of five desires "wealth love fame sleep and food"


昔 村で一番高い神聖な山に  狐が住んでいました。賢い狐は 聖なる息吹きの中 で 修行を積んで 化生する術を 獲得しました。村人に 好かれようと思い 不満を口にする村人を見ると、術を使って不満を解消してやりました。それで  村人は喜び 狐を神と崇め 神饌を供え 安全な住処を与えてくれました。しかし 不満を解消してやると 村人は 更なる不満を言い出すのです。人間と言う動物は 際限のない欲望を 持つと解ると 人間の欲望を 研究し 人間を 欲望地獄から救ってやろうとし、遂に 人間の五欲を 司れるまでになったのです。これで 狐は 村人から更に 崇められると思いましたが、以外にも 不評を買ったのです。しかも 欲望地獄から救ってやっても、直ぐに 人間は 新たな 欲望地獄に向うのです。そんな時 この山に寺が 建てられ その寺が栄え10棟以上の庫裏が 甍を並べるようになり 100人を超す僧侶や稚児が 住むようになりました。こうなると村人は 寺を崇め お布施をし 化粧狐を振り向く者は 無くなりました。狐は 不覚にも 寺の繁栄に嫉妬したのです。始め稚児達を騙して 憂さを 晴らしていましたが、稚児の修行が進むと 狐の業を破り 痛い目に 遭わすようになりまし。楽しみが 苦痛に変ると 狐は「まだ修業が進んでいない稚児を堕落させて 修業を進まないようにし、寺を寂れさせよう 」と 思い立ちました。新入りの稚児が 入山すると、早速 五欲の虜にして 堕落させました。堕落させられた 小坊主は 成人して 僧侶になっても 五欲を 求める様になり 寺の風紀が乱れ 寺は 村人から崇められなくなったのです。困り果てた 住職は 一心不乱に仏に向かい、毎日毎日 食断ちし 読経しました。29日が 過ぎ 痩せ衰え 死を覚悟した頃に 和尚の頭は澄み渡り 目前に光が放たれました。目を閉じ 雑念を払い続けていると、光は 瞼を通り抜け 黄金に輝く光りの中に えも知れない 見目麗しい女性が 現れ「私は弁才天です 私を 祀りなさい  あの化生狐から 必ずあなたを お救い致します」と 言うのです。和尚は 早速 蓮池と言う弁天池を 掘り 弁財天を祀り、頭の中を 弁財天で 満たして 悪化生狐を 退治しに 住処を探しに 行きました。狐は「わしの術は 和尚の法力を超えた」と 確信していたので、住職と 法力争いになりました。狐は あらゆる手段を使って 住職を悩ませますが、弁財天の加護を 信ずる住職は、狐の業には 見向きもせず、読経を 続けたのです。そして穏やかに「狐殿  それだけの業を 磨くのには さぞ 厳しい修業をしたであろうに、何故 私の様な弱い人間に 嫉妬するのか」と 尋ねました。狐は 人間の五欲を 操れるのに 自分の五欲を律する事が出来なかったことに気 付き 住職に 降参したのです。住職は 狐を 弁財天の眷属にし、人間の嫉妬の心を 和らげるよう働かせました。 五欲:食欲 財欲 色欲 名誉欲  睡眠欲の総称五欲 - Wikipedia」「五欲(ごよく)とは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp) 食欲:食べたい、飲みたいと言う欲 財欲:お金が欲しい、物が欲しいと言う欲 色欲:異性等 性の喜びを求める欲 名誉欲:褒められたい、認められたい、嫌われたくないという欲 睡眠欲:寝ていたい、楽したいという欲 稚児:真言宗や天台宗等の大規模寺院の剃髪しない少年修行僧(12~18歳)を 稚児と呼びます  皇族や上位貴族の子弟が 行儀見習い等で寺に 預けられる「上稚児」、頭の良さを認められた僧侶の世話係「中稚児」、芸道等の才能が見込まれて 雇われたり悪徳僧侶に 人身売買売された「下稚児」が ありました  禅宗では 喝食kassikiと呼ばれました。  真言宗 天台宗等の大寺院の修行場は 山間部にあり、女人禁制でした  そのため 上稚児を除き 稚児は 男性社会での女性的な存在となりました  中世以降の禅林(禅宗寺院)でも 稚児や喝食は 恋愛の対象となりましたhttp://newsnoma.blog.fc2.com/blog-entry-1182.html?sp」 弁財天 弁天 妙音天 美音天 大弁才天:仏教における智慧Tie 弁舌 技芸の女神  もとはヒンドゥー教の神で「水を有するもの」を意味する女性名です  金光明最勝王経Konkoumyou-Saisyou-ou-kyoでは 弁才天はこの経を説く人や 聞く人に知恵や 長寿や 財産を授けると しています。その像容姿は 八臂happI(八本の腕)又は 二臂で、身色端厳で、琵琶を持つ場合があります。 日本では 財産の神として 弁財天と 書かれます  七福神の一に組み込まれ 福の神 厠の神となり、しばしば水辺に祀られます  蛇と結びつく事がありますhttps://ja.wikipedia.org/wiki/弁才天」     平成29年(2017年)11月21日

 

狐に騙された怪力男 strongman DECEIVED BY  FOX

聖なる山に  聖なる化生狐が 住んでいて 村人から 神として崇められていました。寺が 建ち繫栄すると 村人から振り向かれなくなった狐は  お寺に嫉妬し、新米の稚児を騙して堕落させ 寺の評判を落とそう としました。そこえ 力自慢の弁慶の様な大男が 稚児として 入山してきて、住職に 里に用を言いつけられ 使いに出されました。早速 狐は男の前に 絶世の美しい娘に化け、足を傷めて歩けないふりをしました。修業の進んでいない男は 弁才天に勝るような娘に 一瞬にして 魅了され「どうなさったのですか  歩けないなら負ぶって差し上げます」と言って 怖がる娘を 強引に背負おうとしました。しかし 娘は意外に重く 背負うのがやっとでした。それでも 背負って 坂を上って行くと 娘が お小水をしたくなったので 下ろしてくださいと 頼むので、ほっとして 下ろしてやりました。すると 誰かに見られないように 見張ってくださいと 手を引いて茂みに 誘うのです。娘が用を足すのを 見てはいけないと思い、手を離そうとしても  娘の握力は 男の力より勝り 足を傷めているとは 思えない力で 大男はズルズル引きずるのです。必死に 堪え 娘から目を背けると チョロチョロと 悩ましい音がしました。想像するだけで  若い男の性欲は 爆発したのです。男は あまりに  恥ずかしかったので 褌を汚したまま それを覚られまいと やっとの思いで 娘の手から逃れ 思わず 山道を掛け下りました。それ以来 男は娘の事 が頭から離れず 逃げ出した事を 後悔し、修業に身が入らず やけ酒を飲んでは 山道を彷徨う毎日を 過ごすようになりましたとさ。   平成29年(2017年)11月21日

 

狐に騙された美少年 Beautiful boy deceived by fox

 貧乏な家庭から口減らしに送られた  細身で 色白の女性を 思わせる稚児が 栄え ていた山寺にやって来ました。住職に気に入られ可愛がられて かなり修業が進んでいました。すると その山に住み 山寺の繁栄を羨ましく思っていた 化生狐は 裕福な旦那に化けて 稚児の前に現れました。旦那が 山道で 足を引きずりながら歩いているのを 郷に用を言い付けられたその稚児が見つけ「どういたしました」と 尋ねると、旦那は 崩れ落ち「贅沢をした所為か 痛風で 苦しんでいます  お寺に 病気祓いをして頂こうと 思いここまで来ましたが、もう歩けません お坊様 病気払いのお経を 唱えてください」と 頼むのです。「和尚さんの所迄 背負ってあげましょう」と 言って背負おうとしましたが、どうした訳か 力だけは 人に敗けない位強い稚児でしたが とても重くビクともしません。仕方なく覚えたての薬師経を たどたどしく唱えると「あら不思議」忽ちに檀那の痛みは すっかり消え失せ スックと立ち上がり「有り難いお経を 唱えて頂き 本当にありがとうございました  お礼を したいのです が あいにく熨斗袋Nosi-bukuroの持ち合わせが ありません  私の家まで 来てください」と 言って手を引き 先導するのです。「所用があるので」と 言っても「ぜひぜひ」と 言って 手を離してくれません。仕方なく付いて行くと 豪邸がありました。真新しい青々とした畳が 敷いてあり、大勢の使用人が ボタン サクラ モミジ カシワ等のご馳走や 般若湯を 運んできました。貧しく 粗末な 食事や  精進料理腹八分しか食べた事が無かったので、その料理や お酒のおいしさに 夢中になって 鱈腹食べました。そして沢山のお金の詰まった熨斗袋 を 渡されました。始めて 褒められ 名誉欲をくすぐられ、食欲を始めて満たした稚児に  旦那は「ぜひお泊りください」と 言って優しく手を握って来るのです。その夜は 酷く疲れ 翌日の昼近まで寝てしました。寺での 起床は 空が薄明い内にしなければなりません。朝寝の喜びは  稚児にとって 初めての経験でした。翌日 言いつかっていた用を済まそうとすると、村で出会う人達は 皆が「なんか体が泥臭い  小便臭い息をする  馬糞臭い口臭だ」と 言うのですが 稚児は 五欲を満たされた事で 気にならず、もう頭の中は五欲が 充ち溢れんばかりで そんなことは 気になりませんでしたとさ。  平成29年(2017年)11月21日

 

和尚の狐退治 busting of fox by monk

栄えていた山寺が ありましたが、繁栄する山寺に 聖なる狐が 嫉妬しました。稚児達を堕落させ 山寺の評判を落とそうと考えた狐が、次々に 稚児達を 五欲の術で 騙し 堕落させたのです。和尚は 困り果て、一心不乱に 仏に向かい、毎日毎日食断ちし 読経しました。29日が 過ぎ 痩せ衰え死を覚悟した頃に 和尚の頭は 澄み渡り目前に光が放たれました。目を閉じ雑念を払い続けていると、光は瞼を通り抜け 黄金に輝く光りの中に えも知れない見目麗しい女性が現れ「私は弁才天です 私を祀りなさい あの化生狐から 必ずあなたをお救い致します」と 言うのです。和尚は 早速 弁天池を掘り 弁財天を祀り、頭の中を 弁財天で満たして 悪化生狐を 退治しに 住処を探しに行きました。これを知っ狐も「稚児達のおかげで 業は磨かれた 和尚なんぞに 負けるものか  和尚は美人に弱いと 聞いている」と 勇んで挑んできました。修業を積んだもの同士 なかなか勝負はつきませんでした。すると狐が 分限者檀那に 化けて「宝篋印塔の通路いっぱいの金銀財宝を 寺に寄付する」と言うのです。和尚が目を閉じ念ずると 宝物に囲まれた弁財天が 眼Manakoに現れました「 わしは弁財天様に守護されている 弁財天様は 財宝の神様じゃ  お前の宝物など 意地悪爺の瓦や瀬戸欠けみたいな物じゃ」と 言うと 狐が消えました。すると今度は 殿様が 現れ「寺に 備前国を捧げ この国の僧侶の最高位を与える」と 言うと、和尚は「何度言わせる  弁財天様は 智慧の神様じゃ  お前の邪心から わしを守護しておる」と 応じました。次に 天下一の料理人が 現れ ご馳走の山を運んできました。和尚は「未だ解らんのか わしは弁才天様の世話になっている  雪隠の神様じゃもの どんな旨い物も食えば 最後に雪隠に落す  あの断食の後の粥だけは  雪隠の具にしたくはなかったがのう」と 言いました。そして最後に 狐が持てる限りの術を使い世界一美しかろうと思う程の美人に化け 天女を従わせて現れました。さすがの和尚 もこれにはたじろぎましたが、目を閉じ瞑想すると迦陵頻伽Karyoubingaや 踊り手を伴い 弁財天の姿が 眼に映ってきました。和尚は「なんと美しい娘じゃ じゃが  わしは弁才天に様に惚れ抜いている   弁財天様は 美の神 芸能の神様じゃ  弁財天様に 比べれば  御前なんぞは 黄泉醜女Yomotu-Simeko以下じゃ」と 言うと 狐は姿を消しました。」「やれやれ 戦いは終わった」と 思い 寛ぐと 激 しい戦いの疲れがどっと出てまどろみました。すると夢の中にドンチャン ドンチャンと楽団の音がして 眠りを妨げました。和尚は「狐が  術を使って眠らせ 殺そうとしている」と 感じ「ひつこい奴じゃ  何度言わせる  わしは 弁財天様に守られている  弁財天様は長寿の神音楽の神様じゃ  お前に わしは殺せん  カッツ」と 喝を入れました。和尚が まどろんだ時 今度こそ成功すると思っていた 狐は  度肝を抜かれ 倒れ込み、心を惑わす業を 吹き飛ばされ 遂に和尚に ひれ伏しました。心を入れ替えた 狐を 寺の護り神の 眷属として寺に 住まわせました。「三谷野呂の百怪談」

平成29年(2017年)11月21日