正月行事 New year events in kamagawa-tyou


 餅搗き(Motitukiの日に 家長は 朝 山に入り 若松を切り ふくらしの木(そよご)と 樫の葉を 若松の木の下方に 纏めてMatomete 括り付けKukuri*tuke  注連縄Siimenawaを張った 奥の間の年神の両側の神棚の支え木に 固定し 台所の竈Kamadoオクド神倉の神水神様に 注連縄を張り 母屋の入り口にも 青藁Ao-waraの注連縄を張り 昆布を飾り付けます。餅搗きには 本家に 親戚の者も 集まり 午後一眠りしてから 年越蕎麦Tosikosi-Sobaの夕食を 済ませ 蒸篭Seiroで 蒸した餅米を  臼に移し 男2人が  杵Kineを振るい 女1人が 返し手をし て 搗き 総掛かり で 丸餅 豆餅 牛用の黍餅 重ね餅を 作り 座敷の蓆Musiroに 並べます。

最後に 餅に 小豆餡Azuki-Anを塗したMabusita 手入れを作り 皆で食べます。分家の者は お手入れを 土産Miyageに 持って帰って 餅搗きをします。本家の者も 手伝いに行きます。しでの木(樺:鉄の木)に  豊作を祈願しながら 小さい餅を 飾り付けた餅花や 木の桶Okeに 大きな鏡餅を入れ 年鉢Tosibatiを 作ります。年神の飾りの松の車枝に 蜜柑Mikanを 糸で吊るし 下の樫に 塩鰯SioIwasi 串柿Kusigaki 二股大根 餅花 等を 付けます。年神の正面に 一文銭を 飾り 女竹Medakeを 割って 氏神様と おお札を 背面の藁Waraで 編んだ 背飾りに刺します。

母屋の飾りには 蜜柑を付け ふくらしの木を 付けます。大晦日Oomisokaに 鰯の頭に 竹串を刺し「狐の口焼き」と 唱えながら 火に焙ったAbutta年取り鰯を 家の入口に刺し 厄病除け 魔除けにします。加茂川町の風俗」    お正月には 家長は 一番鶏の前に燈明し 竈係は 三方に重餅Kasane-Motiを入れ 蜜柑を添ぇ 昆布を巻き 干柿 新箸Nii-basiを 添え 年神に 供えます。家長は 汲川Kumikawaで 注連縄を張った若水桶に 若水を汲み 持ち帰り 顔を洗い 若水で 竈係は 茶と 雑煮を 造ります。大晦日を 寝ずに過ごした者達も 若水で顔を洗います。竈係は 豆餅を 年神 竈の神に供え、湯で餅 法蓮草Houren-sou 昆布 牛蒡Gobou 豆腐 塩Sio-Buriで 澄まし汁の雑煮作ります。湯餅は 歳の数だけ食べます。その後 家長は 氏神に 初詣します。

正月2日 男達は 綯い始めNai-zome(縄や牛の鼻ぐり作りをします) 鍬始めKuwa-zomeをし、女達は書き初めKaki-zome(14日のドントに用います) 縫い初めNui-zome袋物を縫う) 掃き初めHaki-zome(元日は福を掃き出すとされ 掃除をしません)をします。4日に 焼き初めYaki-zome(焼き餅を食べる) 炒り初めIrizome(炒り豆を食べる)をします。家長は 山入りをします。6日 竈係は 摘み始めTumi-zome(七草を摘みます)をし 7日に 七草雑炊を食べます。9日 竈係は 山の神祭りの準備(会場造り 酒の準備 料理の寿司 刺身等を造ります)をし、家長が 仕切り10日に 山の神祭をします。11日 正月に 年神様に供えた鏡餅を 雑煮や 汁粉にして 食べ 一家の円満を 願います。竈係は 大鍬初めOoKuwa-zomeの年鉢の餅と 雑煮を用意し、家長は 牛を連れ ヤレボウを行います。その日 お腹を空かした 歳神のために コトコト様をします。14日はドントを します。ドントでは 竈係がお飾りを集め 餅つき臼の上に飾り 小豆粥Azuki-Gayuを 作ります。小豆粥を 茅の箸Kaya-no-Hsasiで 食べ  綺麗に磨いた鴨居Kamoiに 箸を投げます。夕方 ドントの会場で 御飾りを焼き その火で  餅を青竹製の火箸Hibasiで挟んで  焼き餅を作り 持ち帰って 年神に 供えて置き 初雪の時 食べます。ドントの焼け焦げた松を 持ち帰り 家の入口に祀り  虫よけとします。ドントの夜 トントン様をします。「加茂川町の風俗」  仏教では 竈に三宝荒神を 祀ります。神道では  竈三柱荒神や三本荒神を祀ります。竈三柱神は 奥津日子神Okutu-hiko-no-kami 奥津比売神Okutu-hime-no-kami 軻遇突智Kagututi(火産靈命Ho-musubi-no-mikoto)です。大抵の昔の屋敷では 竈は 西側に作られ 座敷は 南に 納戸は 北に 位置することが多かったのです。竈の間(台所)は 霊界(他界)と 現世との境界とし 竈神を 両界の混在部の神としました。荒々しい神であり 粗末に扱うと 祟られます。竈に 乗る等 しては いけません。神道では 台所の3方の隅に  竈三柱の神を祀る祀る事が多いようです。https://ja.wikipedia.org/wiki/かまど神」  鍬始め:Susuki 松 猫柳 たずの木ニワトコを 桟俵San-dawara(俵の蓋)に刺し 苗に見立てて 畑に埋め、餅 米等を供え豊作を祈り、使った鍬は 洗って安置します。    山入り:木を切り 蔓Kazuraで束ね 先を曲げ稲穂に見立てて祀り、早苗植えの時に 薪Takigiとします。    ヤレボウ:やれ穂う やれ穂うと 掛け声を掛け 飾り牛を 田に連れて行き「の」の字の鏡字を 掘ります。 コトコト様:夜 近所の子供達が 年神様となって 戸を コトコトと叩くと 三賀日の残り物の蜜柑や お菓子で お礼をします。  トントン様:近所の子供達が 年神となって トントンと 戸を叩き 隠れながら 杓Syakuを差し出すと 小豆粥を注ぎ 栄養を付けて夏ガメ(なつやみ)を防ぎます。     平成24年(2012年)1月7日

 

 平成31年(2019年)3月31日に【岡山「へその町」の民話 追補版-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利 吉備中央町図書館 吉備中央町教育委員会】が発行されました。P81~P86に「戦前における我が家の行事」「子供の年中行事」という記事が載っており正月行事が語られています。