三谷日名 狐と火の玉 Will-o'-the-wisp induced by fox


昭和24年の頃だったか 近所のお婆さんが 亡くなりました。葬式のお手伝いの相談があって 我が家は 穴を掘る役に 付きました。その知らせが 振れ回ったので お料理と お酒を持ってお通夜に 行きました。黒い喪服の人 と 白い喪服の人が いました。お通夜では 故人を思い出話をするのが 常でしたので、故人のご親戚の人達は「昨日の枕元にお婆ちゃんが 立った」とか「お婆ちゃんの声がした」等と 死の知らせを 競うようにして話していました。子供ながら その人達は「お婆ちゃんと 一番 自分が 絆が 深かった」と 自慢し合っているのだと 思いました。次の日に お坊さんを呼んで お経を読んでもらっていると、お婆ちゃんの可愛がっていた黒い猫が 棺桶の上に載って来ました。喪主は 驚いて「この婆ぁ猫め  火車か お前は  母さんを取る気か」と 言って猫を追い払っていました。竹の仮の門を潜り 野辺送りをし 円城の医王院に行き お経を上げてもらい葬式をしました。引導が渡されると ご遺族の方を残し、来た時とは違う道を通って 家に帰りました。埋葬した日は 解りませんがその日だったのでしょう。2か月程して お墓が 立てられました。お婆ちゃんの家のお墓は 竹藪に 囲まれていました。その頃 家での僕の仕事は 風呂の水汲みと 風呂焚きと 薪運びでした。水汲みは 辛い仕事でしたが、風呂焚きは 稲穂を焼いて「爆ぜ]を 作ったり 栗や芋を 焼いて 楽しく食べました。薪採りは 多くの場合 夜でした。薪小屋は 母屋より6m程高い 曽根と呼ぶ所の作業小屋との間に ありました。崖のような 坂を 這うようにして登り 薪小屋に 行きました。曽根の作業曽小屋は 小屋と行っても 千歯扱ぎSenba-kogiや 唐箕Toumi  唐竿Karasao 等が 保管され、それらの器具の使用場所 籾や豆の乾燥場や保存倉庫の機能を持っているので 馬鹿でかい建物でした。夜ともなると 静まり返って 妖怪が 出そうな不気味さでした。それに加え 何故か 薪採りの時間になると 狐が 陰に籠もった声で 鳴きます。心細い事 夥しいのです。しかも 重い薪を抱えては 急坂を下るのは 危険なので遠回りして帰るのですが、その途中に お婆ちゃんの墓が ありました。竹藪に向かうと 突然に 明るくなったと思うと 暗闇に戻り 青白い60㎝から90㎝程の火の玉が 音もなく 打ち上げ花火のように 2から3秒間隔で ポッ・ポッ・ポポポと 立ち上り始めました。一瞬 身の毛が 総立ちましたが、不思議な現象の原因を 知りたく 火の玉の出ている場所に 行ってみると、お婆ちゃんの墓から 出ているようでした。狐のような獣が しきりに 穴を掘っているようでした。「さてはこ奴が 火車か。お婆ちゃんの死体を 盗みに来たのか。」と 思いました。「棺を開けられないよう 厳重に 釘打ちした。」と お婆ちゃんの息子さんが 言っていたので 放って置こうと 思いましたが、飼い犬の名前を 呼ぶと「ポチ」が 飛んで来てくれ  火車に 挑み掛かりました。火車は 魂消て 飛び跳ね  暗闇に 走り去りました。次の朝  お婆ちゃんの墓を 見に行くと 墓石の右端の下に 7㎝程の穴が 開いており 奥深くまで続いていました。この時には 僕は火の玉(人魂)は 狐が出すのだと思いました。「著者の経験」

火車:葬式場や 墓場から 死体を盗む妖怪で、年老いた猫がこの妖怪に変化すると言われます。猫又が 正体だともいう。https://ja.wikipedia.org/wiki/火車_(妖怪)」 曽根:川等氾濫などで 出来た堤防状の土地。周囲より高い地形

。「https://ja.wikipedia.org/wiki/曽根」 江戸時代の葬式:湯灌」故人の身体と 魂を 清めるため 僧侶が ご遺体を 入浴させ 髭剃り 死に化粧を施し、死に装束を着せ 「通夜」ご遺体に ご遺族が 一晩中 寄り添い、故人の思い出話をして過ごす。故人の魂が 迷わないよう お線香と 蝋燭が 消えないよう ご遺族が 番をします。火の番をする遺族に 近所の者が 料理を持参し 通夜振舞いをします 「野辺送り」自宅の棺桶に 読経と 焼香を行ない 竹等製の仮門を 通って 戸外に出 葬列を 作って お寺へ 向かいます。葬列は 故人が あの世へ行く 旅路ともされるので 故人が この世へ戻ってこないよう 棺桶を 外に出した後は 火を焚いたり、ご遺体を埋葬した帰りは 別の道を 選んだりします  葬列に用いる道具は 線香 ロウソク立て 位牌 しきみ 霊膳 四花 灯篭 棺台 天蓋等です。 葬列では 白色の綱(善の綱 縁の綱)を 良い処まで 故人を連れて行くために、女性が曳く地域が 多くあります。棺桶の前を 行く場合と 後ろから 綱を持って付いて行く場合が あります。縁の綱を 使うときは  故人とのお別れを 促すために 切れやすい素材の綱を 使います。白い布「手拭いのイロ」を 鉢巻代わりに 肩にかける所も あれば、頭に 被ったり、首に 巻いたり 等する地域が あります。引導寺に着くと、故人に 仏教の教えを語り、悟りを 得られるよう導くために お坊さんが 棺桶の前で 法語を読み上げ、故人が 現世の未練を断ち切り、成仏できるように 引導を 渡され、読経をして いただきます。引導と 読経が終わると、血縁者ではない人は 帰宅します。残ったご遺族は お坊さんとともに、埋葬予定の墓地へ 行きますhttp://www.osoushiki-plaza.com/institut/dw/199805.html 人魂:火の玉 鬼火 狐火 ウィルオウィプス 等と 表現されます。「空中をただよう謎の炎」のことを指しています  その原因は「リンの発光」「可燃性ガス」「発行dする虫」「落雷時の電磁波鑑賞性の球電・プラズマ」「落雷時のケイ素のエアロゲル性の球電 等です。https://ja.wikipedia.org/wiki/人魂」「https://kotobank.jp/word/%E4%BA%BA%E9%AD%82-120343」「https://soyokazesokuhou.com/hitodama」   平成26年(2014年)4月20日

 

平成29年(2017年)3月31日に【岡山「へその町」の民話-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利 吉備中央町図書館 吉備人出版】が発行されました。p287~P291に「死の知らせ「別れに来た兄」「帰って来た弟の魂「夢の知らせ」等の民話が、P292~297に「戦死者の魂が火の球で帰る」「火の玉」「死者の霊の宿る乢」等の民話が載っています。 平成31年(2019年)3月31日に【岡山「へその町」の民話 追補版-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利 吉備中央町図書館 吉備中央町教育委員会】が発行されました。P63~P64に「火の玉」の話が載っています。 p76に「葬式」の話題があり葬列が語られています。