美原 犬五郎兵衛 Gorobei Inu


犬五郎兵衛物語 story of  GOROBEI INU

昔 美原は 酷い旱魃Kanbatuに 見舞われました。人々は 生活に苦しみ 心を病み  悪事を働きました。そんな時 何処からか 修験者が流れて来 て、生塵Namagomiを 食し 畜生道の修行をし、村人に 道徳を 説きました。村人が 不道徳を止めないので「自分を 人柱にして 雨乞いをしなさい 雨が降ったなら 不道徳を 止めなさい」と 告げました。村人は  言われる ままに 男を生き埋め 雨乞いしたところ、雨が 降り ました。村人は 男に感謝し 供養塔を立てて 祭り、 品行方正に なりました。「美原村人より口伝」

 

昔 昔 天保年間  大台風と 大旱魃で 川が氾濫し 田畑を失った上、地は 乾き 食べる物もない時代が ありまし。この飢饉Kikinの時には 人々は 草の根 木の皮 団栗Dongutri 毒抜きした毒草曼珠沙華 等も 食べました。また 忍び込みや 強盗、腐った生ごみを漁るasaru者 等は 当り前で、人間の死骸Sigai を漁る者 時には殺人して 食べる者もいたと うわさされました。この美原でも 例外田で無く 諍いIsakaiは 絶えず、人を信ずる者 等 いなくなりました。その様な 惨状Sanjyouを見かねた 五朗兵衛と言う修験者 が美原の里に どこからともなくやって来て、人々に「修羅界Syura-kai 畜生界Tikudsyou-kai 餓鬼界Gaki-kai 地獄界Digoku-kaiに 身ぃおいちゃぁいけん  人間らしゅう 迷いがあっても 平常な心で 人間界で 生活せにゃぁいけん  笑いに 満ちた天界の生活に せにゃぁいけん」と 近隣の村々を説いて回ったのです。しかし その日の食べ物を 手に入れるのが 精一杯で、人の事や 思想 等どうでも良かったの で耳を貸ものは ありませんでした。そこで自ら修羅界 畜生界 餓鬼界 地獄界に浸り、獣のような生活をし、その結果 いかに 悲惨になるかを 人々に見名前を犬五朗兵衛(Inu-Gorobeiと 改め、食べられる物は 何でも食べ  欲しい物は 何でも 盗ったのです。

今まで 修験者として 仏道を 極める努力を重ねて来ていた 五朗兵衛にとって は「大変な悪人に なり切れた」と 感じていたので、この悪態を 見れば 村人は 悪に染まる事を 避け、自らを 戒め反省するだろうと 思ったのです。村人も さすがに「言うとる事と やっとる事ぁ真逆じゃ あぎゃぁな悪者にゃぁなるな」と 子 供には教えますが、この荒廃した世では 当たり前の出来事で「少し悪い奴」位にしか 思わなかったのです。少財餓鬼の姿を見せれば 反省するだろうと思い、犬畜生と 同じように 腐った生ごみや 糞を食べ  尿を飲み 屍(Sikabaneさえ 食べて見せました。この世の全ての病に 罹り、やせ細り 食べる行為さえ難しくなり、苦しみのたうつ様に なりました。それを見て 村人は 気持悪がって 五朗兵衛を避けて、気持ちは もっと遠くに 離れて行きました。五朗兵衛は 自分の思いが 村人に通じない事に 悩みました。そんなある日、五朗兵衛の元へ 6尊の地蔵が 訪ねて来ました。

五朗兵衛は 地蔵達に「私は 人の悪と人の病の 全部をこの体の中に 取り込み その悲惨さを 衆生に見せ 反省を 期待しましたが なりませんでした。このまま死ねば 悪や 病が天に 舞い散り 人々に苦しみを 与えましょう  お力をお貸しください」と 祈りました。六地蔵達は「人柱となって人々の悪を 正したいと言うのだな 今直ぐに そなたを 苦しみから 解き放って差し上げましょう」と 約束しました。村人達は 村の裏山に 不思議の六条の発光を見て「妖怪でも出たか」と 思い鍬Kuwaや鎌Kamaを 武器として やって来ました。しかし  村人が見たものは有り難い地蔵達が 犬五郎兵衛を 慈しんItukusindeでいる姿でした。村人達は 初めて 五郎兵衛の志の全てを 悟ったのです。地蔵達に 促されるままに 大きな墓穴を 掘り、犬五郎兵衛を 静かに 穴に納め 今までの不届きな仕打ちを 反省し、犬五郎兵衛に 感謝の涙を 添えて 苦しむ 犬五郎兵衛の上に 土を掛けてゆきました。すると 恵みの雨を賜り、飢饉は 遠のいて行きました。「美原村人より口伝」を基にした物語     畜生界:動物の本能に根ざす慾の価値観を持つ世界 餓鬼界:目先の損得に固執する世界 地獄界:あらゆる恐怖しかない世界 人間界:人間らしく、迷いがあっても平常な心で生活する 世界  笑いに満ちた生活  住む人間は 現生の人間ではなく、長い寿命をもつ 巨人です 天道:天人が 住まう世界です  天人は 人間よりも 優れており 寿命も非常に長く、苦しみも ほとんどないと されます  また 空を飛ぶことが でき 享楽のうちに 生涯を 過せます 多財餓鬼:充分食べられる事により 生ずる不幸   現代風に言えば メタボリックジンドロームや 次なる欲望の生ずる世界に 住む餓鬼 少財餓鬼:人間の糞尿や 嘔吐物 屍 等だけを 飲食物として 摂取できる餓鬼 無財餓鬼:飲食すると 飲食物が 炎となります  施餓鬼供養済の物だけが 食べられる 餓鬼 声門界:仏を学ぶ世界 すべての学び事を 志す世界 緑覚界:自意識を 悟った世界 菩薩界:仏の使いとして 世を救う 世界https://ja.wikipedia.org/wiki/十界」  犬五郎兵衛の供養塔:北緯34度52分24秒東経133度46分21秒  近くに 六地蔵が祀られています 右上にも 石仏があります 供養塔は 平成29年に尋ねた時には 近くの墓石諸共無くなっていました  平成23年(2011年)7月17日

 

美原 日名忠兵衛頌徳碑 Stone monument to eulogize Hina-Tyuubei's virtues

 美原の宇甘川左の道に近い田の中に2間より やや大きい割石の大岩 があります。延宝晩年に 宇甘川洪水が 起こり集落や 田畑が 濁流に飲まれました。流路が 変わり、耕地交通路も 奪われました。村人は 言葉を失う程 悲嘆にくれたのを見て、日名忠兵衛は 道路の破壊を 修復する決心をしました。流路を穿ちUgati元の流路を 復元し、破綻した堤の数か所を 新しい堰堤Enteiを 築き修復し、標高の低い地に 石を 積み堤を新設、再度の禍の根を 絶ちました、この時 崖から落とした岩が 記念として 残されました。忠兵衛は93歳で 没しました。昭和34年 に碑が 建て換えられました。昭和42年12月 県道拡幅工事に 合わせ、現在の地に 移されました。「美原の村人のより口伝」  平成23年(2011年)7月17日

 

犬五郎兵衛のように be that like Inu-gorobei

 昔 犬五郎兵衛と言う修行僧がいました。大変な 飢饉で食べ物が無くなり、酷く 治安が乱れました。「こんな悪い世ではいけない  皆を救おう」と 厳しい修業をしました。腐った物を 食べると危険な事を 教えるため、生ごみ を食べたり 病気で死んだ者の肉を 食べ病気になって見せました。毒のある草の毒抜きする方法を 毒に当たりながら 工夫しました。大切な 物を 隠されたり 物を失う事の辛さを教え 身を以て「健康で 奪い合いの無い事が いかに安全で 幸せであるか」を 教えてくれた 犬五郎兵衛に 村人は 感謝しました。だから 村の人は子供に「五郎兵衛ような立派な人に成るよう」にと 言い聞かせました。ある日 お母さんは お饅頭O-mmanjyuuを子供に内証Naisyoで こっそり食べようとして、棚に隠しました。しかし子供の五郎蔵は 見つけました。お母さんは「これぁ腐り掛っとるとけぇ 腹ぁ下す  食べちゃぁおえん」と 注意しました。所が 五郎蔵はこっそり食べました。お母さんは「あまり掛かった物ぅ食うちゃぁおえんと 言うたろう  まぁ腹は 壊んで 良かった」と 五郎蔵を 叱りました。五郎蔵は「犬五郎兵衛のように 腹ぁ壊す事が どぎゃぁに 辛ぇか 知ろうとしたんじゃ  良ぇ 人になろうとしたんじゃ」と 答えました。これには お母さん 何にも言えませんでした。次の日  お母さんは 桃を タンスに隠そうとしましたが、又 息子に 見つかりました。「これは 鬼にしか食えん 特別の奴じゃ  人間には ぼっけぇ毒じゃけぇ 食べちゃぁおえん」と 釘をさしました。また 五郎蔵は 喜んで盗み食いしました。お母さんは 又 叱りました。五郎蔵は「五郎兵衛みてぇに 毒の抜き方ぁ調べようとしたんじゃが 毒ぁ抜けとった  母ちゃん抜いたんか  毒の抜き方ぁ知っとるお母ちゃんは偉いのう」と 答えました。褒められてお母さんは 苦笑いするしかありませんでした。そして次の日、半殺しのお萩に「これは神様の食べ物なり 食べると祟られるなり」と 書いて神棚にお供えました。

狡いKosuiお母さんを 見張っていた五郎蔵は それ も盗って食べました。「神様に 供える物迄食うて この破憎者Gorozoumonが」と お母さんが 叱ると、五郎蔵「隣の小父ちゃんOttyanがお母ちゃんの事ぅ御神様O-kami-sanと 呼んどった  神様Kamisanが 食い切れんで残していたんで食うた」と 答えました。さすがにお母さんも「神様が 食い残したお供え物じゃねぇ うちがこっそり食おうと思うとったのに  何でお前が 横取・・ウヤムヤ・・・ 親不考者め」と 本音を 吐きました。五郎蔵は「親不孝じゃぁ無ぇ 犬五郎兵衛さんのように、お母ちゃんを半生Hangorosiじゃ無ぇ  反省させようとしたんじゃ 何が 親孝行じゃ」と 答えました。さすがに お母さんはこっそり一人で美味しぃ物を 食べる事を 止めました。犬五郎兵衛さんの功績は かくも偉大なのです。「美原の村人との冗談話」 破憎者:破僧Hasouとは 破和合僧の略で 釈迦教団に対し 分派活動を働く僧侶達 破落戸Gorotuki人の弱みを 付いて来る ならずもの    半生半殺し:もち米とうるち米を 半分程 搗いて作った お萩 牡丹餅     平成23年(2011年)7月17日