広面 龍狩り物語 Story of Angling of dragon


昔、平安な頃と ても欲張りな分限者bugensyaが 広面の大高山の麓に住んでいました。男は京都に出かけた折 高貴な人達が「龍を見たいものだ  龍が 見られるなら 金に糸目は付けない」とか「龍の肉を食べれば 永遠の命が授かる  なんとしても食べたい  死なないなら 全財産を出しても良い」と 言う噂を聞きました。男は 広面に昇龍山と言う山があり、その山の奥に 吉洋渕kitttyoubutiと言う大きな池があり、時々龍が 遊びに来ると聞いていたので「龍を捕えよう  龍を捕まえれば 例え捕まえられなくても 龍の肉が手に入れれば 死なない体が手に入り、おまけにもっともっと分限者になれる」と 考えました。広面に戻り 親戚の猟師に 龍を捕まえてくれるよう 頼みました。猟師は 頼まれれば断れない性分だったのですが、龍 等見た事がなく、いるとは 聞いた事が 有るには有るが 本当にいるかどうかも 解らなかったので、龍を捕まえる自信が ありませんでした。

とは言っても 貧乏の世話を 焼いてもらっていた 負い目もあって 男の執拗な 懇願を 断り切れず 2つ返事で 引き受けました。 龍を捕まる方法に 思い悩んだ挙句の末、ある方法を 思いつきました。「龍を捕まえるにゃぁ 身ぃ隠すにに 丈夫な持ち運びの利く 蚊帳Kayaと 縄Tunaと ぼっけぇ釣り針が 必要じゃ  買って来てくだされぇ」と 猟師が 分限者に頼むと、男は 態々Wazawaza 京や 大阪まで 出かけ 特注の蚊帳と 縄と釣り針を 作らせ 持ち帰りました。そして 猟師は「龍の餌が欲しい  日本一味の良ぇ肉が 十貫程なけりゃぁおえん 」と 言いました。分限者の男は 直ぐに 大山Daisenの博労座に 使いをやり 極上の牛を1頭買い求め 良く霜降りの入った 後背筋Kouhaikinnの肉を 猟師に渡しました。猟師は「高価な縄や 釣り針や 肉を けちんぼうの男が 買う訳ぁねぇ」と 思っていたので、何のためらいもなく 買って来た事に 驚きました。猟師が 大竿に 丈夫な縄を付け 大きな釣り針に 肉の切り身を通し、声を殺し 忍び足で用心して 吉洋渕に 仕掛け、草の茂る岸に 迷彩色の緑色の蚊帳に篭もり 釣りをする振りをしました。案の定 男は 蚊帳を 何に使うのか知りたくて、又猟師が 龍を捕る瞬間を 見届けたくて 後を付けて来て 藪に身を隠しました。蚊帳に 篭る猟師を見て「龍に覚られないように 蚊帳を 煙幕代わりに使うのか」と 感心した迄は 良かったのですが、直ぐに蚊Kaや 蚋Buyuや 虻Abuが 寄って来て 刺しました。刺される痛さは 緊張で気にならなかったのですが、暫くしてくる 凄まじい痒みに 襲われ「蚊帳が 蚊帳の本来の使われ方で 用意されたんじゃ」と 解りました。それでも 龍が釣れる瞬間を見たいので  我慢に我慢しまし、時々 浮きがピクピク動くのを見て、その都度 心を踊らせていました。しかし いっこうに猟師は 龍を釣り上げられません。痒い所を 掻けば  更に痒さが増します.。「掻くな 掻くな」と 心に念じて 耐えに 耐えていましたが、心ならずも 無意識のうちに 掻いたのです。一時的に 痒さを 忘れましたが、これが 痒さの増幅の無限の連鎖の始まりになりました。ポリポリ掻いているうちに 終に 痒みに耐え切れず 思わず「痒い」と 小声で叫んだのです。するとすかさず 猟師は「そこで 何ぅされとるんなら  声ぇ出しちゃぁおえまぁ  龍が食い付く寸前だったんに 龍は神経質で ぼっこう賢くて 記憶が良ぇ 一ぺん失敗したら もう仕舞じゃ 2度と 餌に 近付かんじゃろう  きっと 龍は 琵琶湖に帰る 龍を釣るのを諦めじゃ」と 言いました。欲張りな男は 結局大損をして 悔しがりましたが、猟師を責める訳にもいかず 地団太Didandaを 踏みました。龍が いなくなると村に 旱魃が有って 雨乞い祈祷を 吉洋渕でしても、雨坪岩でしても 雨は降らなかったので、村人は「欲張り男が 龍を追い出したからだ  分限者だから 嫌々持ち上げていただけだ」と 言って責めたので、欲張り男は 村に居られなくなり 遠い町に 移り住みました。「三谷日名百怪談」    広奥の村人より口伝:昔 広奥にかつて郷士であることを鼻にかけ 村人に 小作料を高く取る等の 無理強いをしていた男がいました  大地主であり それなりに 世話になっていたので 多くの村人は 嫌々従っていましたが、農地改革の結果 その郷士が ただの百姓になると、周囲の眼は その男を蔑むようになりました  男の家族は いたたまれなくなって 墓仕舞いし 岡山市に転居しました  昔 吉洋淵に住む龍が昇龍山から飛び立ったと言います 龍等に纏わる迷信:龍を見ると 金運開眼する  龍肉を食べると 永遠の命を得る  人魚の肉を 食べると 不老不死をえる  大高山・鼓山:北緯34度49分21秒東経133度49分53秒  高山:北緯34度49分13秒東経133度48分53秒 昇龍山:北緯34度48分57秒東経133度48分33秒の山(狭義の昇龍山)と鼓山とその福山Soeyamaである小高山を含めた総称 吉洋池吉洋渕:北緯34度49分16秒東経133度49分2秒 大山博労座:享保15年(1730年)に設けられた牛馬市 博労座駐車場:北緯35度23分24秒東経133度32分13秒

平成23年(2011年)9月23日