三谷 中倉 野呂 白蛇の地神 White snake as Jijin "god of the earth"


 昭和24年(1949年)の夏の頃 豊岡小学校に 国のモデルケースとして 付属幼稚園が でき、両親がいない少年が 入園しました。人見知りの強い子だったので、幼稚園に 行くのが 嫌だったのです。実際に 親戚の人位しか 話をした事が なかった少年にとって、知らない顔の先生や 園児等の冷たそうに見える目は 耐え難いものだったのです。お爺ちゃんの澄彦に「幼稚園に 行きとうねぇ」と 愚図ると、お爺ちゃんは「おえるもんか  もっと強い心の子になれ」と 蔵に 閉じ込め 鍵を 掛けました。蔵は 高い所に 小さい天窓が あるだけで 中は暗 く冷たい空気に 醤油や味噌の臭いが 浸み込んでいました。始めの内は 蔵に仕舞ってある 家具や 古銭 宝物 古文書等を 探索 し 勉強を していましたが、それも 飽きると お爺ちゃんが出してくれるまで 寝て待つ事にしました。夜が更けて 来たのですが、お爺ちゃんは 迎えに来ないのです。外で「あの子がおらん 鼠にでも 引かれたんじゃろうか」と 話す声がしました。少年は お爺ちゃんに 叱られるような 悪い事をしたと 思われるのが 嫌だったので 大人達に 助けを求めませんでした。辺りは 月の光だけとなり 次第に静かになる と虎落笛Mogaribueが 大きく聞こえるようになってきます。鼠に引かれそうな寂しさに 泣きたくなりました。

覚悟が決まり天窓を仰ぐと 天窓から音もなくユルリユルリと 白い蛇が 倉に入ってくる姿が見えました。今まで見た事のない大きさで、太さは 子供の腕程もあり 長さは竹箒程ありした。すると 少年の傍で 母が 子を守るように 休み始めたようです。蛇は 嫌いでしたが この時の蛇は 頼りになりそうなので 疲れていた少年は 深い眠りに 付きました。空が白む頃 少年は 目を覚ますと白い大蛇が 丸い赤い目に 優しい光を湛え 蜷局Toguroを巻いていました。

少年が目を覚ましたのを見て 白い大蛇は ゆっくり と天窓から 山に帰って行きました。村の大人が 峠に向かいながら「ここのお爺ちゃんは 地神様を 祀らないので 地神祟りに あうぞ  わしの家には 石に字を彫っただけじゃが 地神を祀っとる  お前の所は堅牢地神じゃぁたよのう」と 話すのが聞こえました。少年は「お爺ちゃんが 地神を立てないんで わしが 地神の祟りを 受けとるんじゃ」と 思いました。その夜も 空腹と 喉の渇きと 尿意を堪え 白い大蛇と 添い寝しました。3日後 お爺ちゃんが 少年を蔵に閉じ込めたのを 思い出し 倉の扉を 開けてくれました。中倉野呂には 10人も 子供がいたので 一人位 欠けても 誰も 気づかなかったのです。少年は お爺ちゃんを 見るなり「地神を立ててよ」と お願いしました。すると お爺ちゃんは「そんな物は立てん  鎮守の杜に行って見ぃ  村の地神が立っとろう  それに家Utiの倉にゃぁ 巳地神様が 代々住み着いて下さる  じゃけぇ家の者は 長生きし 厄介に巻き込まれん  せえに 村一番の金持ちじゃ  白蛇は尊い地神様じゃ 指を指したり 苛めたり 跨いだり 殺しちゃぁ おえんぞ」と 教えたくれましたた。それからは、少年は巳紳に護られていると 感じ 急に心強くなって 人見知りを 克服する努力しました。「著者の体験談」

加茂八十八ヶ所霊場86番札所:案田野呂 北緯34度54分16秒東経133度48分33秒 岡山県で 最も古い 5角地神塔です   地神:寛政2年(1790年)徳島藩11代藩主 蜂須賀治昭Hatisuka-Haruakiが 地神塔を 神社や寺院等に 建てさせ 五穀豊穣の祭りをさ せたのが始 まりです。5角形の細長い心石に 天照大神 大己貴命 少彦名命 埴安姫命 倉稲魂命Uka-no-Mitama-no-mikotoの字を刻みます 経済的理由から 後に 自然石に 地神と刻んだ 石碑に なります   地神祟り:山岳信仰を 普及するため地神信仰が利 用され、山伏達は「地神を祀らないと 不幸が起こる」と流布し 地神封じの祈祷料を 稼ぎました そのためには安価な地神碑を 建てさせる 必要があり、自然石に地神と刻ませ 祀らせました   堅牢地神:地 あ るいは 万物を 確実に 強い力で 守る仏教の神https://ja.wikipedia.org/wiki/堅牢地神」   巳神: 巳神は 地神の範疇に入り、白蛇の姿である事が 多く 水神龍神の持つ力を 備える場合もあります  屋敷や田畑に長く 住み付き いわゆるその地の主です。www7b.biglobe.ne.jp/~narigama/sub26.html 「俗信」: 蛇の抜け殻を 持って いると 死なない」「蛇の抜け殻を 持っていると 厄除けになるので 旅をする時等の お守りにする」「蛇の抜け殻を足に付けると 早く走れる」「蛇の抜け殻を 持っていれば 金持ちになる」「蛇の抜け殻を持っていればお 産が 軽い 」等   鼠に引かれる:原因がないのに 忽然と 人がいなくなる事 神隠し    鼠に引かれそう:たった一人でいる時の心細さの様     平成23年(2011年)10月18日

 

2017年3月31日に【岡山「へその町』の民話-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利 吉備中央町図書館 吉備人出版 】が 発行されました。p258~P258に「酒屋の主の蛇」2項目が 記載されています。 平成31年(2019年)3月31日に【岡山「へその町」の民話 追補版-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利 吉備中央町図書館 吉備中央町教育委員会】が 発行されました。p54に「主の蛇」の話が 載っています。