宮地 仲之谷 藤折の悪戯狐  Mischievous Fox in Hujiori

ある男が 中之谷の友人を 訪ねた夜の帰り道に 迷いました。どうも 逆に進んでいるようなので煙草Tabakoを吸い  心を落ち着か せ 冷静に道を 選択しました。明かりを 見付け その家を訪ねると あの友人の家でしった。「狐に抓まれたKitune-ni-tumamaretaのだろう。」と 友人が 言うので、友人宅に泊まって 翌朝帰りました。「吉備中央町の伝説(1)」


藤折の悪戯狐物語 Tale of MISCHIEVOUS FOX IN HUJIORI

中之谷集会場の坂上に  消防施設があり 道が 分岐します。左の細い方の道を 選び  南谷に向かい 登ると 峠で 大道に向かう道が 分岐します。大道側に回ると 左手に 身延様があり 太い道に出ます。大道に向かう道を 進むと 左手に池が見え フジオリの峠に差し掛かります。フジオリに 悪戯好きItazura-zukiの狐がいました。フジオリは 寂しい所で 夜には 誰も通りません。ある男が 仕事帰りに 友達の家を訪ね 話過ぎて遅くなりました。帰り道で 男は この辺りの地理に疎かったので、迷子になりました。

すると 峠に差し掛かる辺りから 急に辺りが暗くなり 不思議にも 夜のようになってしまい 道先が良く見えなくなりました。太い道を 行けば 明るい所に出るだろうと 思ったので 太い道を選んで 進むのですが なぜか どんどん道は 細くなり 山に 入って行きます。フジオリには 性悪な狐が出ると 聞いていたので 心細くなりました。不安に陥った気を 落ちすかせるために 道端の石に座り 狐が嫌いとされる煙草Tabakoを プカリプカリとゆっくりと吸ったのです。すると 気持ちが 落ち着き 冷静さを取り戻したので、辺りを見回すと どこかの家の灯Akariが見えました。ともかく 夜も遅いので 一夜の宿を 頼もうと 明りに向かい 暗い道を 足先で探りながら 少しずつ坂を下って行きました。近付いたので 家の様子が見ました。どうも見たような庭や 母屋だと思ったのです。思った通り その明りは 出発前に 訪ねた家の灯火Tomosibiだったのです。友人は帰ったはずの男が 夜更けに戻って 来たので 驚きました。「あんたも 意地悪狐に 騙されたんか。今日は 帰ろうとしても また狐に 騙されるだけじゃ。泊まりんせぇ。明るくなんりゃぁ  狐も 騙さんじゃろう。 朝を 待ってお帰りなせぇ」と 言われたので、好意を 受け入れて 泊まり、翌日 家に帰りました。「宮地中之谷の婦人より口伝」  平成23年(2011年)9月27日

 

藤折の狐物語 Tale of Fox in hujiore

宮ノ谷のある男が 大道の親戚に 使いに出されました。フジオリの森の中の細い道を進んでいて、なんとなく 道を迷ったような気がしたので  次の交差点では 正しい方向と思う道を進みました。すると 前に通ったような所に 出ました。今度は 間違わないようにと 思っていると 又 あの交叉点に来たので 先程とは 別の道を進みました。しかし 先に通った道を 進んでいる様な 不吉な予感がしました。案の定 また元の所に出ました。困り果て 木の株に 腰掛け 煙草を吸い始めました。すると 木の株が 突然に消え 空気椅子に 座らせられたのです。ゴロンと後ろ向きに転び落ちると 懐の手拭いを 落としてしまいました。転んだ拍子に 汚れた手を 拭こうと 手拭いを 拾おうとすると スルリと 手から抜け落ちました。すると 旋風が吹いて 足先に絡みつきました。こんどこそと 思って手を 翻すと 手拭いも 翻り 薮に飛んで行きました。薮に 素早く手を伸ばすと 運悪く茨の刺に触れました。血が出たので 血を止めようとして 懐を思わず探ると 落とした筈の手拭いが ありました。不思議な 出来事を思い返しながら 傷口を 縛り ふと山際を見ると 狐が 愉快そう顔をして アカンベェをしながら こちらを見ているのです。「そうか あの狐が騙したのか。しかし 童が 何かねだっているような可愛らしい仕草じゃ。」と 思い、お弁当のおかずが 油揚げだったので ポイと投げてやると 嬉しそうに食べて 新しい術を 披露しました。男が 面白い手品を 見せてもらうと 手を叩いて褒めてやりました。それからは 男はこの道を通る時には 油揚げのお弁当を 用意しました。狐は 男に たわいない悪戯をしかけ、その面白さに ご褒美をもらい 一匹と一人は 仲良しになりました。「宮地中之谷の農夫より口伝」

 平成23年(2011年)9月27日

 

平成31年(2019年)3月31日に【岡山「へその町」の民話-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利吉備中央町図書館 吉備中央町教育委員会】が発行されました。p42に同じ所をグルグル歩かされる「山の中を歩く」が載せられています。p46に「灯を見せる」と言うと藤折れの狐の物語が載せてあります。

 

おしゃま狐 fox of quite the little lady

昔 城山に「おしゃま」と呼ばれていた歌のうまい狐が住んでいました。その歌声が 遠い時は何事もないのですが、近くの時は 町で何か事件が起こるのです。ある良い月の夜 殿様が散歩していると 美しい官能的な歌が 遠くから ドンドン近づいて来 終に耳元まで近づいたのです。聞き惚れていた殿様は ハッと我に返り 飛んで城に戻ると 家来達に 町中を見回らせました。すると  何と城の金蔵の千両箱が 1個無くなっていたのです。「おしゃま狐め。やりおったな。」と 言って殿様は 家来達に 山狩りを命じました。家来達は「いつまでも ウロウロしているような間抜けな泥坊が 居るものか。」と 不満を言いながら 殿様の命令なので 嫌々 従い 山狩りすると、城を 囲む山道を 大汗をかきながら 千両箱を担いで グルグル回っている男を 見つけたので 逮捕しました。男を 殿様が 直々取り調べると「2日も前から城の蔵を狙っておりました。すると 突然 ご家中の者達が 全員出掛けられたので 容易に蔵に 忍び込めました。逃げようとするのですが なぜか 同じ道に 戻ってしまうので 焦り 冷や大汗を たんまりとかきました。運よく 手拭いがあったので 拾おうとするとスルリと逃げ また拾おうとすると スルリと 逃げるのです。そうするうちに 捕まりました。」と白状したのです。殿様も 家来達も「おしゃま狐が 城を守ってくれた。」と 感謝し 稲荷大明神様に 油揚げを持って 詣でました。城の者と おしゃまは 仲良しになり 領内は 栄えましたとさ。木曽町の昔話 (minsyuku-matsuo.sakura.ne.jp)」      平成23年(2011年)9月27日