吉備中央町の農家の多くは 田植えが終わると 早苗が良く育ち豊作となるよう祈り シロミテ(代満・代充)とか サナブリ(早苗饗・早苗上Sanobori・早苗振舞い)と 称し 田の畔等で 御馳走を食べました。神主を招き 大変な酒宴を開く地域もありましたが 多くは1家族だけで行う 質素な神事でした。「さ」とは田植えの神を表し、「さおり・さびらき」は 神の降臨を意味し 田植えの前に祝います。「さのぼり」は 神が上る事を意味し 田植えの後に 神様が山に帰って行くのを 見送り 苗の順調な育ちを 祈って行います。「三谷日名の村人より口伝」「www.yuraimemo.com/1023/」 吉備中央町小森地区を中心に 田植えの終わった後に シロミテとして 鰆茶漬け等 鰆料理を食べる習慣があります。鰆が 出世魚なので 稲や子供がすくすく育つ事を願って 茶漬けにして食べたのです。茶漬けは 水を張った田を 連想させます。三谷日名野呂の シロミテは 巻き寿司と 沢庵でした。「三谷日名の村人のより 口伝」
鰆 Spanish mackerel
瀬戸内海は 鰆の産卵地で 5~6月に 良く捕れます。かつては 鰆の集団が 山のように盛り上がり その様子を 魚山と表現されました。沢山捕れたので 高瀬舟で 小森や 江与美の船戸に 運ばれ 冬の間に生産された炭や 薪 春野菜等と 交換し 岡山の町に 運ばれました。この流通が 田植の後の祝い「サナブリ」に 美味しい鰆を 奮発される習慣を 生じさせました。数軒の集落単位で 1~2尾を求め 分け合って あるいは寄り集まって料理しました。鮮魚店では 鰆祭と称して 5月中~下旬に 売り出しをします。「三谷 小森 下加茂の村人のより口伝」 鰆とは 狭腹が変化した言葉で 体形が細長い事に 由来します。出世魚で 体長50cm位の若魚を「狭腰Sagoti」と 呼び 体長80cmの青年魚を「柳鰆Yanagi-Sawara」と 呼び 1m以上の成魚を「鰆Sawara」と 呼びます。魚偏に春と書く様に 春告げ魚ですが 実際には1年を通し 捕れます。鰆料理と言えば 刺身 茶漬け 照り焼き 塩焼き 味噌漬け焼き 煮付けや 蒸し物 生鮨Kizusi こうこ鮨等です。身の色や 皮の見栄えに 問題があり 高級魚から外されますが 味は魚の中で旨い方で 人によっては「一番旨い」と 言います。1尾買うと 大抵は余るので 醤油漬けにして保存します。加茂川地区の鰆茶漬けには 皮を剥いだ刺身を使います。勿論皮付きでも 差し支えありません。醤油漬けにしたり 焙ったり 叩きにすると 又 異なる味が 楽しめます 「三谷 小森 下加茂の村人のより口伝」「https://ja.wikipedia.org/wiki/サワラ」「https://cookpad.com/category/1202」
鰆祭:現在ではシロミテ神事は 見られなくなりましたが 最近では この季節になると「鰆祭」と 称して鰆の大売り出しが 商魂たくましく 各地の魚を扱う商店等で 行われます 田の神:稲の豊穣をもたらす農業神で 水稲栽培を主とする日本では 民族信仰として農神を崇める習俗が古くからあります。稲霊Inadamaである倉稲魂Ùka-no-mitamaや穀神の大歳神OoTosi-no-kamiの名が上げられています。 民間では 一般に田の神と 表現されますが 東北地方では 農神Nou-gami 山梨 長野では 作神Saku-gami 近畿では 作り神Tukuri-gami 山陰東部では亥の神Ino-kami等とも呼ばれます。 東日本では えびす 西日本では 大黒を 田の神とする地方が多く 漁業神 福徳神とは別の信仰となっています「https://kotobank.jp/word/田の神-94011 」 平成25年(2013年)5月19日