田土 吉長    金鳥様 Esq.Kintyousama "golden fowl"


 吉長の地に 金の鳥が 埋めてあり、正月元日の真夜中 金の鳥が 鳴きながら 東方に向って 飛び立つとされます。その声を 聴いた者は 長者になると 言われます。この石塔の前を通る者は 3種類の木の枝を 供えて行く 習慣があります「平成十年三月吉日のやまびこ会立札」

 

昔、吉長に 真面目な男が 住んでいました。穏やかな性格の正直な 働き者で、朝から 晩まで休む事を知らない程に 働き、時間があれば 医学 薬学を学んでいました。病気の人や 食に困る者があれば 薬草を探し、こつこつと貯め置いた米を 惜しげなく与えました。村の者は 男に感謝し、吉長薬師菩薩と呼んでいました。これを 瑠璃光浄土Ruri-jyoudoから見ていた 薬師如来は「あの男 仏道に入れば 真の菩薩になるかも知れん」と 思い、迦陵頻伽Karyoubingaに 男の心を 見抜いて来るように 言い付けました。ある日 男の前に 旅の娘が現れ「全国のお寺を行脚しております  喉の渇きを 癒すため一杯の水 を恵んでください」と 暖かくて 慈愛のある鈴の様な声で 水を求めました。全国を 旅している筈なのに  全く日焼けをしておらず 肌は白く きめ細やかで 張りがあり、まるで 天女のようでした。それまで 働詰めで 女性を 気にする事も無く過ごしてきた男 でしたが、太陽の光背の霊光を 放つこの女性には 眼を奪われ、呆けたように 口を開けたままで 感慨に浸りました。気を取り直し 茶碗に 清水を 汲んで 震える手で 娘に渡しました。娘は 暖かくて慈愛のある鈴の音の様な声で 礼を言うと、藤吉は 舌が強張りKowabari 声にならないような声で「少しここに 留まって下さい」と 心の底を 打ち明けました。娘は 快く受け入れ 一つ屋根の下で 暮すようになりましたが、娘は 天に向かい陽の光を 食べるばかりで 水も 飲みませんでした。娘の体を 心配した 藤吉は「健康は 薬師如来様の教えのように 医食同源に あります  あなたの健康を 心配する 私の心の苦しみを 解ってください  私に あの時の水を 飲んだあなたの幸福そうな顔を もう一度見せて下さい」と 頼むのです。娘は 一度水を飲んだ事を思い出し、何かを 覚悟した様に 神々しく お教を唱え 食べ物を 一口食べました。

男は 微笑み 幸福を全身で表しました。これを 機に  娘は人間と同じように食べるようになり、夫婦になって 共に働いたので 豊かになりました。これを見て 薬師如来は「医食同源の言葉を以て 迦陵頻伽の心を惑わし、人間の食物を口に させ 食欲に溺れさせ 色欲に溺れさせ 財を成し 贅沢をさせている  これ以上 迦陵頻伽を 世俗 に溺れさせてはいけない  迦陵頻伽を 迷わせるようなあの魅力的な男が 菩薩になって 浄土に来れば 浄土の風紀が 乱れる恐れがある」と 迦陵頻伽を 極楽浄土に 呼び戻ましたす事にしました。妻が「私は必ず戻ってきます」と 悲しみを 堪えながら言い残し 突然にいなくなりました。男は 嘆き悲しみ 妻との再開を 願い、初めて出会った所に 人の頭程の鈴のような 形の石を 置きました。優しく美しい 妻の帰りを 信じる 男は 逢いたさ 故に 記念碑に 参り続けました。元旦に 記念碑に参ると 記念碑の下より金の鳥が現れ「私が あなたの妻の迦陵頻伽 愛しいあなたに一目逢いに参りました  長い間留まる事は 許されていません  極楽浄土に 帰らないと いけないのです」と 東の空に 向かって 飛び立ちました。それからは 迦陵頻伽に 逢いたさに、藤吉は 長寿の象徴である松の木と 鳳凰の止まる木である桐の木と 仏の供える(Sikimiの木の枝を 束ね、記念碑を 金鳥様と 名付け 参り続けると、迦陵頻伽は 金の鳥の姿で 毎年 元日に 男に逢いに来ました。それを見てせらった者達は 3種の木の枝を持って参りさえすれば 男のように 裕福になり 長生きできると信じ、色々の屁理屈を付け 松竹梅 檜杉椿Hi-San-Tin等の木の枝を3本束ねお 参りするようになり、運が 良ければ あの男を待つ 金の鳥を見る事ができました。男は100歳になると 長い長い迦陵頻伽への思慕の苦しみから 解き放たれました。とて も幸せそうで穏やかな 仏の様な微笑みをしていたそうです。それからは 金の鳥は 金鳥様を 訪れなくなりました「平成十年三月吉日のやまびこ会立札」を基にした物語  金鶏山:岩手県西磐井郡平泉町 北緯38度59分36秒東経141度6分33秒    金鳥様の立て札:高梁御津線(31号線)の吉辰口を北西に登り、川東吉長公民館の100m程手前のT字路を 左に曲がり、北西西に100m程進むと 道は北向きになります  北上すると 左手に分岐する道の端 北緯34度52分7秒東経133度43分48秒に 金鳥様 王子権現社 稲荷大明神の案内の立て札が 立っています    師如来薬師瑠璃光如来大医王仏:薬師本願 功徳経に よれば、薬師如来は 東法浄瑠璃世界  即ち瑠璃光浄土の主で、瑠璃光を 以て 衆生(全 ての民)の病苦を 救う努力をすると 言われます    迦陵頻伽妙音鳥逸音鳥、妙声鳥:半人半鳥の キメラの想像上の生物で、共命鳥と ともに 極楽 浄土に住みます  卵の頃から 鳴き、その声は 仏の声のように 美しいとされます  美しい芸者や 花魁や美しい声の芸妓を迦陵頻伽と 呼び 褒めます     仏教の3大聖木無憂樹Muyuu-jyu 菩提樹Bodai-jyu 沙羅双樹Sarasou-jyu無憂樹は 釈迦の母が 釈迦を産む時 ァソッカの花に 手を差 し伸べると 安らかに 出産する事が出来たので ァソッカ( 無憂樹)と呼びます  菩提樹は 釈迦が悟りを開いた時に座った木(日本名の菩提樹は別種で インドボダイジュは 日本では寒さに耐えられないので 温室で育てます)です  沙羅双樹(鶴林Kakurin)は 鍛冶屋から の供養を受け 激しい腹痛を起こし 最後の説法を終え 涅槃に入った時に この木の下に 横たわりますが、日本名 の沙羅の木とは 別種ですお釈迦さまの木(仏教の三大聖木) (zen-temple.com)」  平成26年(2014年)8月15日