富永 坊主にする狐 Fox who has one's head shaved

 昔、ある山間の村に 人を 良く騙す狐が おりました。夜に 村の者が 狐の峠を 越えようとすると 必ず坊主にされました。一人の若者が「わしは 絶対に 坊主にされず 峠を越えて見せる。」と 勇んで 出かけましたが、やっぱり 坊主にされ 村人に 笑われました。「加茂川町の昔話(岡山私立幡小学校読書クラブ)」


坊主にする狐 FOX WHO HAS ONE'S HEAD SHAVED

昔 ある富永の山間の村に 人を良く 騙す狐がおりました。村の者が 夜に 狐の峠を越えようとすると 騙されて 必ず坊主にされました。一人の 山武士修業を 積んだ 若者が「わしは 狐と何回も騙し合いをした。今は 狐に騙されん。絶対に 坊主等にされずに あの峠を越えて見せる。」と 皆が止めるのも聴かずに 峠に行き、日が暮れるのを 待ちました。次第に 暗くなって 狐が 陰気な声で 鳴き出しました。「寂しそうに 鳴いておる。騙せるものなら騙してみい 。 わしの肝っ玉は 太いぞ。」と 堂々と構えていると、ガサゴソと 近くで 音がし始めました。目を凝らして 暗闇を見定めると 狐が 枯葉を体中に まぶしていました。「枯葉で 化粧か。  わしの村の別嬪のお嫁さんに 化けおった。枯れ枝に 団栗を付けて 赤子にした。」と 狐の正体を 見きわめると 自信を 漲らせMinagirase飛び出そうとした 瞬間、後ろの遠くで 狐が泣きました。気になり振り返ると 女狐の姿を 一瞬視界から消えました。再び 前を向くと 子供を 背負った若い女が 音もなく 目の前に 差し掛かったので、男は飛び出し「こりゃ 待てぇ。 化け狐がぁ。  とっ捕まえて 狐汁にしてやる。」と 掴みかかりました。女は「うちは 隣村から 嫁に来た者じゃ。孫を 爺さん婆さんに 見せに行く所じゃ。」と 言って 立ち去ろうとしました。男は「そんな嘘は 信じん。化ける所を 見ていたぞ。」と 声を荒げると、女は「うちが その狐だと言う確信はあるのですか。いけずやわぁ。」と 言い返し 里に向かって 山を スタコラ 下り続けました。若者は「確かに一時 目を放した 。わしが 邪な糞Jya-na-kusoを しているのかもしれん。」と 思いながらも、少し間を置いて 女の尻の後を付いて行きました。女は 梅の実が生る 大きな家に 着き「お爺さん。お婆さん。参りました。」と 綺麗な声で 呼びかけると、梅の実を 捥いでいた お爺さん お婆さんが 出て来て「おう。おう。可愛いいのう。良い実じゃろう。」と 赤子を 覗き込んで 梅の実を うっかり赤子に 嗅がせると、お嫁さんは「梅の実は毒じゃ。」と 梅の実を 払おうとしました。すると 赤子の顏から 団栗が ポロリと   一つ落ち 片目がなくなりました。それを見て 確認した男は「爺さん。婆さん。そいつ等は 木の葉で 化粧した狐じゃ。証拠に 着物は ガサガサじゃ。」と 女に掴みかかると、爺さんは「わし 等の娘に 何ぅするんならぁ。この娘ぁ 確かに 隣村に嫁にやった わし等の1人娘じゃ。」と 女を守ろうとしました。男は 苛立って「騙されとる。赤子は枯れ木じゃ。」と 言って、女の背負っていた赤子を 庭石に 叩き付けました。赤子は ぐったりし ピクピクと 痙攣を し始めました。お爺さんは「わしの孫に何ぅした。許せん。」と 言うので 男は「違う。違う。あんたは 騙されているのじゃ。子供の片目がなかろう。」と 反論したので とうとう大喧嘩に なりました。お婆は「孫には 目の玉はちゃんと 二つある。あんたこそ 何処に 目ぇ付けとるんならぁ」と 言うので、男は我に返り 赤子を見ると 円らtuburaな 両目 で 男を見ながら 男に抱いて貰おうと 両手を伸ばしていました。男は 無い筈の目が 赤子に有るのを知って 急に 罪悪を感じ 平伏しました。お爺さんは「婆さんの言う通りじゃ。わし等の孫ぁ危うく 死ぬところじゃった。孫に 坊主になって謝れぇ。婆さん。石鹸Sekkenと剃刀Kamisoriぅ持って来ねぇ。」と 言って、お婆さんの持って来た石鹸を 男の頭に グリグリと タップリ塗って 剃刀で ジョリジョリと 髪の毛を 剃り落としました。男は反省し 涙し、クリクリ頭を なでながら「許してつかぁせぇ。」と 詫び、お爺さんに 背中を 蹴られながら 帰って行きました。夜が明ける頃に 村に辿り着くと、心配していた仲間達に「そぅれ 見た事かぁ。良ぅ光っとるのう。」と 迎えられ 大笑いされました。岡山県に伝わる昔話 加茂川町の昔話(岡山私立幡小学校読書クラブ) 「富永の河原澄江さんのお話」 これらに似たパターンの違う話は 幾つもあります。 平成27年(2015年)6月19日

 

三本枝のカミソリ狐 FOX WHO SHAVES THE HEAD WITH RAZOR IN SANBON-MATU

昔 奥州の奥に 三本枝と言う薮が あり 狐が 1匹住み付き人を 良く騙したので、村人は  暗くなると 三本枝に 近づかないように していました。ところが 村の度胸を自慢にしていた 彦兵衛と言う男が「じれったぇ。たかが 狐が何じゃ。退治してやると。」言って 夜更けに 三本枝に来ると、優しそうな娘が 赤ん坊を背負って 麓の小屋にに 入っていきました。中には 婆がいて 愛おしそうに「おお娘じゃないか。泊まりに来てくれて 嬉しいぞ。」 と 家の中に向かい入れて 戸を閉めました。男は「わしの方を見んのに 気を注ぐように ふるもうた。赤ん坊も 石のように 息もせんで ピクリともしない。狐の奴が わしに 罠ぁしかけとる。」と 確信し、激しく戸を 開け婆に向かい「婆さん。そいつぁ お前さんの孫でも 娘でもねえ。三本枝の狐じゃ。」と 叫びました。娘と 婆がキョトンとして「何ぅ言いなさりょうる。と いぶかるのも構わず、婆から 赤ん坊を取り上げ「ほら。赤ん坊は石みてぇに重いし 動きもせん。 赤ん坊は石じゃ。」と 言って 赤ん坊を 囲炉裏の火に 投げ込みました。静かに 寝ていた赤ん坊は 激しく泣いて 直ぐに 動かなくなりまし。婆が 驚き 熱さを 堪え 赤ん坊を抱きあげた時には 赤ん坊は焼け焦げていました。婆が 傍にあった包丁を 振り上げ「わしの孫を ようも ようも  殺してやる。」 と言って 襲い掛かりました。彦兵衛は 恐れをなして「大変なことぅした。」と 冷や汗を かきながら 必死に逃げ回ると、運よく 明かりが 見えたので 助けを求め 藁をも 掴む思いで逃げ込みました。家の中には 坊さんがいて「何者かに 追われているんか。」と 言って 本尊の後ろに 匿ってくれました。飛び込んできた婆が 堂の中を 山姥のような形相で ギョロギョロ見回し「わしの孫の仇が 逃げて込んで 来んじゃったか」と 尋ねると、坊さんは「お前さんの孫ぅ 殺した悪党が おるのか。見つけたら 捕まえて届ける。」 と 答えました。婆は「必ずな。必ずな。」と 何度も 坊さんの意志を 確かめ 帰って行きました。坊さんは 彦兵衛を 前にして「終わった事は 元にゃぁもどらん。頭ぁ丸めて 赤ん坊の菩提を弔いなされ。婆にゃぁ わしが 良う言うておく。」と 言い、彦兵衛が「罪ぅ 犯したまんま 村にゃぁ帰れまぁ。」と 悟り頷くと 刃こぼれした錆びた 剃刀を 持って来て「あいにく 研いだカミソリぅきらした。」と 言いながら 頭を ゾリゾリと剃り始めました。彦兵衛が「痛ぇ。」と言うと坊さんは「人殺しの罪に 較べりゃぁ これ位の罰ぁ 軽すぎる。」と 言うので 気の遠くなるような痛さを 我慢していると 頭から ポタポタと血が 首に伝ってきました。血を見ると 彦兵衛は 気を失ってしまいました。朝 目覚めると 彦兵衛は 三本枝に 転んでいました。昨日を 思い出し 頭を整理するのですが「どこが 真で どこまでが 狐の仕業か。」理解できず すごすごと 血だらけの頭を 摩りながら 村にかえると、村人は「なんなら。その頭ぁ。狐に 剃られたんか。」と 聞かれると「狐には 合わんかったが 罪ぅ犯したんで 坊主になった。」と 答えました。村人に 腹を抱えて笑われると、その後は彦 兵衛は 自慢話をしなくなったとさ。http://onboumaru.com/017-sanbon-eda/2/  平成27年(2015年)6月19日