木彫りの雛人形 Hand maded wooden Hina-doll


昔、昔 貧しい家に やさしい兄と 目の不自由な 妹が住んでいました。近所の分限者の家では、雛祭り を盛大に送っていて 大勢の子共 が 雛荒しに 押し寄せて来て、「綺麗kitrei」「美味しoisii」と 歓声が 流れて来るのを 聞いていました。雛荒しに 出かけたくても 目が見えないので 出かける事も出来ず、行けたとしても 綺麗 な雛飾りを見る事も 出来ません。妹は 兄に「私も、雛祭りをしたい」と 呟きました。貧しいので、雛をかえる筈が ありません。お兄さんは「わしが、内裏様を 作ってやる」と 言って、木の枝を切って来て 小さいコケシの様な 男雛と女雛を 作って 飾ってやりました。妹は 嬉しくて 2体のお内裏様を 手に取り、雛の姿を 確かめました。雛達は 大きく目が開いていました。菱餅も、白酒もなかったので 黍団子を 食べ清い水を 楽しみました。それでも 二人にとっての初めての雛祭りは 幸せその物でした。仕舞うのが 遅れて 妹の婚期が 遅れてはいけないと 思い、翌日 早くお内裏様を 片付けようとして、兄は女雛の眼Manakoが潰れ(ているのに 気が付きました。兄は 女雛が 妹の病の身代りに成ろうとしているのだと 思いました。

兄は「流し雛をしよう」と 妹に提案しました。妹は 兄が精魂込めて作ってくれた女雛を 川に流すのが 惜しくて、しっかりと握り絞め「嫌々」と 首を振り泣き出しました。兄は 女雛を 握りしめる 両手を、優しく両手で 包み「女雛を 流せば、きっとお前の眼が 見えるようになる   男雛は大切に仕舞って おこう そうしたら、来年は 二人で 女雛と3人官女を 作って雛祭りをしよう」と 言いました。妹は 肩をひくつかせながらも 承諾すると、兄は 妹を川に連れて行き 木の葉で 船を作り、女雛を 乗せて「女雛様、目が見えるようにしてください」と 祈りながら 川に流しました。すると、妹の眼は 次第に治って行きました。雛祭りが 近付いて来たので、女雛と 3人官女を彫りました。妹は 喜喜としてお 内裏様と 3人官女を 飾り、桃の花を 活けました。雛祭りの日が 来ました。妹は 分限者の家の 5段の雛段飾りを見て、自分たちの 雛段のみすぼらしさに 愕然とし失望しました。子供達が 雛荒しに来て 雛段を見られるのが嫌で、雛祭りが 終わると 急いで 仕舞い込みました。眼の病を治してもらえた事、兄の優しい誠意を思えば 例え細工が悪いと言っても 絶対に捨てられません。妹は毎年、1日だけ飾り翌日には 仕舞ったのです。

分限者の娘は 5段飾りの雛段が 自慢でしたので、少しでも長く 飾って置き 友達に自慢話をしました。この二人の娘が 年頃になると 分限者の娘に 隣村の庄屋の息子との縁談が 持ち上がりました。庄屋の息子は 縁談相手の下調べに来ると、いそいそと 雛とは思えないようなみすぼらしいコケシ雛を 愛しそうに 仕舞っている、継ぎ接ぎtugihagiだらけの着物を 着た貧 乏な娘の姿 を見ました。その娘の 清楚で 澄んだ瞳に 今まで知っている娘にはない 慈しみを感じ 心打たれました。分限者の娘は 確かに 評判通り 色白の別嬪Beppinさんでしたが、友達を集め鼻 高々に 大はしゃぎしていました。鼻に付く思いを感 じ挨拶を交わすだけで 早々に 逃げるように 隣村に帰って行きました。次の日、貧しい兄妹の家に 庄屋の使いが来て「突然に訪ねて来て、御無理を申し上げる事を お許しください  実は庄屋様のご子息が 妹様に好意を抱いております  縁談をお考えくださいませんか」と 相談されました。左程美しくもな く 日焼けした妹に とんでもない縁談が飛 び込み 兄は たまげました。とりあえず 返答を待っていただき、庄屋の息子の素行調査をしました。村の美しい娘達に 尋ねれば、素行の良し悪しが 解るだろうと 考え話掛けました。娘達は「働き者で、賢い人です 浮いた話は 聞いた事が 有りません」と 口を 揃え告げたのです。兄は 情報をもらうと 紳士的に礼を 言って深く お辞儀をしました。今時 珍しく礼儀正しく誠実な妹思いの男が 現れたので 村の娘達は大騒ぎでした。妹の 縁談を進めようと 心に決め、村を去ろうとした時 引き留める者が ありました。振り返るとあの庄屋の 使いの人でした。二人は 偶然の出会いに 微笑み合い、互いに信頼の表情を浮かばせていました。使いの男が 照れくさそうに「もう一つ縁談を申し上げます  庄屋様の娘様が、あなた様に 好意を寄せています  ご考慮頂きたいのですが」 と  頼むのです。信頼する者同士、反対する理由は ありませんでした。そして 二組の夫婦は 仲よく助け合って 家を支え、名庄屋の名を 上げました。さて分限者の娘は「庄屋の息子に振られた」と 評判が立ち、婚期が 遅れたそうです。「三谷野呂の百怪談」

雛祭り: 雛祭りは 雛遊Hiina-asobiとか 桃の節句とも言い、女の子の 健やかな成長を 祈う節句の行事です。和暦の3月3日、現在の4月頃に行います。明治6年(1873年)の改暦以後は 一部の特殊事情のある地域、あるいは旧暦を大切にする地域等を除き、新暦の3月3日に 行うのが 一般的です。桃の節句と言う理由は 新暦の3月が 旧暦の4月頃 即ち 桃の咲く時期だったからです。    雛祭りのタブー:雛祭りは 毎年行わないと、目が潰れます  雛飾りを 仕舞忘れると お嫁に行けなくなります  自分の成長を 守ってくれた人形を粗末にすると不幸になります。古くなった人形は感謝の気持ちを添えて 供養しなければ 祟られます  勿論 これらは 女性のたしなみを 諭すための 迷信です  飾り方のタブーを 知りましょう 婚期の遅れ: 雛飾りを 祭が終わると 直ぐに片付けないと 嫁に行けないとか、婚期が 遅れると 言われます。「早く片付けない事は だらしない性格の女を 予想させ、男性に 敬遠される」と 親達が 恐れ、女の子に 整理整頓の躾Situkeを求める事によって 生まれた迷信とされます 「https://ja.wikipedia.org/wiki/雛祭り」「tashlouise.info/通年行事/雛祭り/530.html」 雛流し:神事や 呪術によって罪 穢れ 災厄 病気等 の不浄を 祓った人形(形代Katasiroを 海や川に流した 風習の名残りです。「https://kotobank.jp/word/雛流し-611895雛荒らし:3月3日の節句に 子供達が 雛祭りをしている家庭に 供え物を もらいに行く習慣      平成24年(2012年)12月30日