矢喰宮の柿木 persimmon tree on the precincts of Yaguiguu shrine


矢喰宮には 大きな柿の木が 生えていました。神主は 贅沢な生活を していたので、柿の実を「下賤gesennな食べ物じゃ」と 言って、取って食べた事が 有りませんでした。毎年 沢山の実が 成りますが、そのまま熟して 落ちるのです。神主は 柿の葉が パラパラ散るので 掃かなければならないし、熟柿zukusiが ポタポタと 落ちれば 片付けなければ ならないので「切ればなんぼうか 寛ぐKuturoguじゃろう  いつか切ちゃろう」と 考えていましたが、先代の宮司が 大切にしていたので なかなか 決心が 付きませんでした。ある日 少年が「学問の成績が 上がりますように」と 菅原神を 一心に 拝んでいました。神主は「熱心でいい子じゃのう」と 思い 笑顔で見ていました。ところが 拝み終わって 帰る時、柿の実を 取って 食べ始めました。それを見た 神主は「この 柿泥棒め」と 怒鳴りました。少年は びっくりして、思わず逃げ出しました。逃げるのを見て 神主は「許さん」と 反射的に追い掛け 少年を捕まえ、柿の実を取り返し 少年の頭を 小突いたのです。少年は「いつも 大夫さん、柿の実が 邪魔がっていたけぇ、取っても 叱られんと 思うた  堪ぇておくれぇ」と 言い訳をしました。神主は「こりゃ ごんた  嘘こきゃぁ尻に松が 生えるぞ はぁ 泥棒じゃが」と 叱りました。

少年は「大夫さんのお友達が、オコゼが軍艦ぶって西ぃ西ぃ流れるみてぇな女子Onagoに 言い寄られ 逃げ回っていたんに、その女子が 他の男と 親しぅ話ぃ したら その男のほほだかまちゅうどやしたんを 馬鹿な奴じゃと この前 言うとられた  いらんと思うた 女子に せろうた お友達より 質が悪いんじゃぁないのか  大夫さんは 柿に 焼餅を 焼いたんじゃけえ 柿ぃ餅じゃ」と 口答えしました。神主は 的を射た少年の反論を 聞いて わが身の行為が 恥ずかしくなりました。神主は「済まん事ぅした  悪ぃ癖で いがってしもうた  柿の実ぅ 仰山Gyousan取って 友達にも 分けてあげなされ」と 謝って 柿の実を取って 持って帰らせましした。それからは 柿が もらえるので 近所の子供達が 神主を 慕って 矢喰宮の庭で 遊ぶようになり、神主に 勉強を教えて貰うようになりました。親達は「天神様(菅原神)のご利益Goriyakuじゃ」と 言って神社を 敬いました。神主は 先代が 柿の木を 大切にした理由を 知り「良い運動になる」と 言いながら落ち葉を 掃き 柿の木を 大切にしました。「三谷野呂の百怪談」

寛ぐ:気持ちが安らぐ ごんた・ごんたくれ:悪たれ 尻に松が生える:尻に火が付く 泥棒の始まり はぁ:もはや オコゼが軍艦ぶって西に西に流れる:とても 見るに 堪えない 醜い顔の人 せらう:うらやましがる     ほほだかまちゅうどやす:頬を叩く 平成23年(2011年)7月29日

 

神主と栗の木 Shinto priest and chestnut tree

昔、山奥の小さい神社の神主さんは 庭の栗の木が 嫌いでした。夏には 葉が茂っ て日影ができ涼めるのですが、嫌な形と嫌な匂いの花が 咲きます。秋には 紅葉して綺麗\なのですが、沢山の落ち葉が 落ち、毬栗Igaguriが 落ちるからです。「いつか切ろう」と思っていました。ある日 庭を見ると 小さい栗鼠Risu達が 嬉しそうに 両手に栗を 持って食べていました。神主さんは 可愛らしい訪問者を 好きになりました。それからは 栗の木を大切にし ました。「尾原苅山村のお話」  平成23年(2011年)7月29日