三谷 蟹味噌 brown meat of crab


昔、三谷川や焼谷川は 魚が 沢山住んでいいました。釣り好きの少年は 豊岡小学校から帰ると 取る物も取らず 魚釣りに出かけました。時々 ガンツが 釣れました。釣れると言うよりはミミズを刺した針を 爪)で挟んだ蟹が「せっかく捕った餌を 逃してなるものか」と 離さないので 引き上げられるのです。この蟹が 美味しい事を 少年は良く知っていたので、釣れると大喜びしました。甲羅を 左右から持って鋏で挟まれないよう バケツに入れ 持ち帰りました。それを見ると、いつも叔父さんが 真っ先にやって来て 料理をしてくれるのです。叔父さんと 言っても 少年とは 10歳しか 違わないので 兄ちゃんA-tyanと呼んでいました。兄ちゃんは 「お前が捕って来たのじゃけぇ 一番おいしい肉を 食べねぇ   まずい味噌は わしが 食べる ヌルヌルしていて 砂も混じっているけぇ」と 決まって いつも 同じ台詞Serihuを言うのです。少年は 見るからに 不味そうな 味噌を 触ってみると 成る程  ヌルヌルしていて 粒粒感があり 砂が 混じっているような感触だったので 兄ちゃんの親切に 感謝しました。食べ難い 足や爪の肉を穿り返し ておいしく食べました。少年は小学校を卒業すると 東京引っ越ししました。あの蟹の味が 忘れられません。蟹の出汁で 作った 味噌汁が 食べたいと いつも思っていました。

しかし貧し過ぎる生活だったので、蟹 等 食べられませんでした。少年は 理科の宿題で 昆虫採取をし 標本を作りました。目黒不動尊の杜は 昆虫の宝庫でしたので、杜の 隅々まで 駆け巡りました。目黒不動尊の杜の 小さな祠や 石仏や 唯の自然石に迄、お賽銭 が供えられていて、その辺りを探すとザクザクとお賽銭が 土に埋もれているのです。これを拾い集めて 蟹を買って 食べたいと思ったのですが 神仏の祟りが 恐ろしく それは できませんでした。そして運良く国立大学に入学できました。卒業後 ある会社の薬理研究所員になった青年は 初めて 給料をもらいました。直ぐに 中華料理屋に 入って蟹を 注文しました。上海蟹Syanhai-ganiを 店員が 持って来てくれ、迷っている青年に 食べ方を 説明してくれました。「蟹は 味噌が 一番おいしい   だから優れた技術 等の最重要点の事を 味噌と言うのだ」と 説明され 食べてみました。肉 等比較にならない程に 味噌は 美味しかったのです。そして、祖父の法事で 田舎Inakaに帰った時、青年は 兄ちゃんに  上海蟹を 土産miyageに 持って行き 食べ方を 説明しました。兄ちゃんは「ありがとう」と 小さい声で お礼を言いました。「三谷出身の人の実話談」 ガンツ:岡山の方言ではガンツは蝤蛑ガザミの事ですが、三谷では藻屑蟹モクズガニも ガンツと呼びました。    三谷川大坪の淵:三谷日名 北緯34度54分9秒東経133度47分17秒    焼谷川湯谷橋:三谷口 北緯34度54分46秒東経133度48分2秒    目黒不動尊・泰叡山瀧泉寺:東京都目黒区下目黒 北緯35度37分43秒東経139度 42分29秒        平成23年(2011年)9月15日