竹荘 竹荘の豪商 wealthy merchant in takesyou

昔 手広く商売をして 大金持ちになった商人がいました。ある日 玉島港に 葉煙草の商売に出かけました。招き入れられた 玉島の問屋の床の間に 珍しい形の伊部焼Inbe-yakiの徳利が 飾ってありました。竹荘の豪商は それを見つけ、無性に欲しくなりました。ところが 「この徳利は 備前の殿様が 後楽園の庭に窯を 態々作り 焼いた物をだと」言って断りました。ところが竹荘の豪商は「譲れ譲れ」と 後に下がりません。困り果てた 玉島の問屋は「途方もない高値を吹っ掛ければ  諦める」と 思って「あんたが 昨日 積んできた 高瀬舟一艘の葉煙草と交換してやろう」と 言いました。すると 竹荘の豪商は 躊躇なく 伊部焼の徳利一つと 船いっぱいの葉煙草を交換し、ウキウキして 竹荘に戻って行きました。その肝っ玉の太さに玉島の商人達は魂消Tamageました。「賀陽町史追補版p824」「村人口伝」

 


竹荘 欲しいものは欲しい Can't control the mind that I want

竹荘に タバコなど 農産品を 手広く 商売をする 金持ちがいて、ある日 玉島港へ出かけました。その玉島の 問屋の客間に 大変珍しい徳利Tokkuriが 置いてありました。歪では ました が何となく バランスが 取れていて、竹荘の商人には 優れた美術品に 思えるたので あちらの方向から こちらの方向から眺めて 品定めしました。見れば 見るほど 惚れ惚れ、欲しくて 堪らなくなりました。そこで 由来を尋ねると 問屋は「備前の殿様が 後楽園の庭に 焼き窯を態々造り 焼いた物じゃ」と言うのです。

それを聞くと、尚更に 欲しい気持ちが 騒ぎ出しました。「譲ってくれ」と 頼んだのですが、玉島の商人も 気に入っているらしく 譲ろうとしません。断られると 断られる程、欲しくなるものです。頼まれれば 頼まれる程、手放すのが惜しい気持ちに なるものです。玉島の問屋は 頑固になり 強情を貫こうとしました。二人の鬩ぎ合いは、延々と続きました。 竹荘:使うとらんで 埃を 被らせている物を どぎゃぁして譲らんんのじゃ 玉島:埃を 被っとる  じゃけぇ古びて見えて 良いんじゃ  譲れん物は譲れん    竹荘:奥で丁稚が わしに 目配せしとる  殿様の作じゃないのと違うか    玉島:わしゃぁ 殿様の作じゃと信じとる  じゃけぇ譲れん  こねぇに歪な物う 何でそねぇに欲しがるんなら  お頭Otumuう 疑いとうなる    竹荘:お頭が おかしいんは 玉島じゃぁ  このへしゃげ具合に 芸術を 感じるんじゃ    玉島:見て見い  この酒の字を  童Warabeが書いたみたいじゃろう    竹荘:確かに  じゃが筆の勢いが 良かろう  なんぼうでも 良ぇ  売値を 言いねぇ  なんなら船の荷の半分と 換えても 良ぇ  呉れんのなら 盗むでぇ    玉島:竹荘の  ごじゃ言うちゃぁおえんでぇ  そねぇな割に 合わん事 う何故Nazeするんじゃ わしにゃぁ解らん    竹荘:玉島が 断るけぇ 余計に 欲しゅうなるんじゃ  もう後にゃぁ引かんぞ    玉島:解った  お前様の欲しいと言う気持ちの強さにゃぁ 負けた  竹荘の申し出通りじゃぁ おえん   昨日運んできた 高瀬船一杯の 葉タバコとなら 交換しても 良ぇ    竹荘:良かろう  交換じゃ  徳利を 貰って行く  葉タバコを 運び込もう    玉島:ちいと待ってくれ  本真Honma にそぎゃぁに仰山の 葉タバコを 呉れるんか  大損じゃろうに  本真は この徳利は 丁稚が言うように 偽物なんじゃよ  こぎゃぁな ごじゃかしい条件を 飲まんじゃろうと 思うたに  ようま お飲みんさった。    竹荘:ああ 欲しいもんは 欲しい   偽物も 本物も あるもんか   玉島:肝っ玉が 据わっとるなぁ  お前様の豪気にゃぁ 唖然とすらぁ  持って行きんせぇ  ぶっ魂消たのう  本真に お代は いらんけぇ 竹荘:あんごう言われるな  一度言った言葉を 変えられるもんか と言う訳で竹荘の商人は、喜んで 煙草と 交換 し徳利を 大事そうに 持って帰って行きましたとさ。「賀陽町史・竹庄の豪商」「村人口伝」を基にした物語  平成23年(2011年)9月13日