大木・細田 千鳥の共鳴き Responsive singing of  plover


昔、備前国の山奥に、畳)職人の家族が 住んでいました。お母さんは 女の子を 残し早くに 亡くなり、お父さんは 若い後添えを 貰って 可愛い女の子が 生まれました。姉妹は 大変仲良しだったのですが、まま母は 自分の子 を先妻の子より 可愛がったのです。日が経つに連れ まま子が 憎くなって行き、殺してしまいたいと 思うように なりました。お父さんが 大阪城の畳普請()に出かけ、長い間 留守をしていた ある日、まま母は まま子と ほんまの子を 連れて、隣村の 天神山の川向こうの裏の 急峻な 山に入ったのです。まま母は まま子を 大きな松の幹に 縛り付け、ほんまの子の手を 引き「狼にでも 食われてしまえ」と 言い残し 引き返しかけたのです。

天神山の向こうの川を 渡り天神山の 大桜の所まで来て ほんまの子は「お母ちゃん  お姉ちゃんが 憎いけん 頬玉 がまちゅうどやしてくるけぇ この辺で待っとっておくれぇ」と 言って、山に 戻り 姉を縛っている綱を 解いてから 大桜の所へ戻りました。「頬玉叩いてちゃたら、姉ちゃん縛 られたまんまで 涙流して 泣いとった」と 母に報告しました。まま母は「ようやった」と 褒めました。その夜 まま母は 物音に 気付き 音の元を 探してみると、まま子の姉が 帰って来て 牛小屋で 寝ようとしていました。母は「何じゃ、生きとったんか  とっくに 死んだと思うたのに」と 言ってそのまま 牛小屋に 寝かせました。翌日  粗末な物を食わせ、今度は まま子だけを 連れて 山に入り 谷底に 突き落としました。足が 折れて 歩けなくなったのを 確認し、まま母は 家に小躍りしながら 戻ったのです。「これで 確実に死ぬ  赤飯(Aka-manmaでも焚いて 娘と お祝いしょう」と 言って、小豆を 研ぎ始めました。その頃 山では まま子の周りに 千鳥が 群れて寄って来ていました。まま子は お父さんから「千鳥は諸声Morogoeで 鳴く  諸鳴きすりゃぁ 自分と 相手の心が 一つになる  千鳥の真似して泣けば 千鳥は 気持を解ってくれる  千鳥は 大切な人を 呼んで 泣いて 大切な人を連れて 来てくれるんじゃ」と 聞いていたので、少女は 千鳥の鳴き声に合わせ 千鳥の鳴き真似をし 一心に 願い事を しました。すると 千鳥は どこからか 矢立てYatateと硯Suzuriを 探して持って来て、羽を 一本抜いて 少女に渡しました。少女は 傍に有った枯れ葉に 羽を筆にし、傷口から浸み出す血を 墨にして「父ちゃん 助けて」と 書きました。千鳥の群れは 枯れ葉の手紙を 咥えて飛び発ちました。父は 天守閣で 騒ぐ千鳥を見つけ「娘の見に異変が起こったかも知れない」と 感じ取ったのです。胸騒ぎを誘い 騒ぐ千鳥に合わせ父親が 共鳴きすると、千鳥が 手紙を 届けに 舞い降りて来ました。千鳥から 血で書かれた 救助を求める娘の手の手紙を 受け取ると、棟梁と 殿様から 許しをもらって、後を 弟子に任せて 急いで 帰りました。千鳥が 後となり 前になりして 父親を 先導してくれたので 娘を助けに 山の中の深い谷に 向かいました。父が 大怪我を した娘を 見つけ助けると、娘は 涙して 何度も何度も 千鳥に感謝の意を 伝えました。役目を 終えた千鳥は 嬉そうな鳴き声を 掛け合い、谷筋を 上って行きました。父親が 娘を 背負って 連れて戻ったのを見て「誰にも 知られない筈の 奥山に落とした 筈なのに  深い谷だったので 確実に死んでいる筈なのに  しかも殿様の命令の仕事に出かけたのだから 大阪から 当分帰って来られない筈なのに 夫が それをどうして 知ったのか、なぜ そこにいるのか」と 不可解がり、得体のしれない 神懸かり的な 恐怖を 咄嗟に 感じ取り、まま母は 驚き慌てて 着の身着のまま ほんまの子を 置いて 何処(に 逃げて行きました。ほんまの子は「悪いお母ちゃんじゃけど  許してやって」と お父さんに頼みました。姉も「妹が可愛そうじゃけぇ 許してあげて」と 頼んだのです。父は 二人の優しさに 動かされ 許してやる事にし、あちこちを 訊ね探しましたが、まま母は 自ら行為が 恥ずかしくて 恥ずかしくて帰って来られなかったのです。姉の足の大怪我も治り、3人は いつまでも 信じ合い 幸せに暮らしたそうな「三谷野呂の百怪談」 「加茂川町の民話(1)」によく似た「まま子とほんまの子」お話が載せられています。

 千鳥の共鳴き:スポーツ応援、万歳三唱、読経 等する時 単純な言葉を繰り返すと 仲間との一体感が生まれます。洗脳の手段として 悪用される事があります。    万葉集の諸鳴きの歌: 友千鳥諸声に鳴く暁は、ひとりのねざめとこもたのもし        平成23年(2011年)7月7日