上加茂 狐の敵討ち Revenge by fox

昔 奥谷の山の古墳を ねぐらにしていた化け狐が 居ました。山奥には 愛宕神社が 祀られていたので 村人は お供物を持って 毎年正月と 社日に 株筋が 集まりお参りしていました。ある年の正月の参詣の途中 荷物が 軽くなるのですが、巧妙な減り具合なので 気が付かないのです。いざ 神饌をお供えしようと 荷物を開けると 狐が 好きそうな物だけ 足りなくなっていました。村人は「また狐にやられた。いつか お仕置きせにゃぁおえるまぁ。」と 話し合いました。愛宕神社参詣が 終わった後 信心深い 樋口と言う男が 奥谷の山奥の古墳に 注連縄を 張りに行くと 古墳の前でしきり に神様の姿をした者が 何かを埋めていました。樋口は「さては愛宕神社の神饌を 盗み過ぎた狐が 神様に化けて 食べきれなかった物を 埋めとるんじゃろう。」と 思い、そばにあった小石を 投げつけました。

普段は 石礫が的に当たる事は 無いのですが この時は 偶然に神様のお尻に命中しました。驚いたのは 誰もいないと信じ 夢中になって作業をしていた神様です。びっくりして飛び上がり 逃げ出すと 誤って茶釜の弦谷 に転げ落ち 激しく腰を打ちました。痛さに耐えられず 化けの皮が剥がれ 狐に姿を戻したのを見て 樋口は「狐如きが人を騙し腐って  ざまぁ見ろ」と 言って注連縄を古墳に掛け 次の古墳に向かいました。次の古墳の室には 誰かが後ろ向きになって座り化粧をしていました。樋口は「懲りない奴め  今度は若い娘に化けて色仕掛けか  じゃがどねぇな娘に化けるんじゃろう  楽しみじゃ」と 思い年寄りとは言え 男ですから 化粧が終わるのを待ちました。白粉を作っているのか しきりに何かをシャカシャカと音を立てかき回しています。樋口は「化粧も終わった  また脅して美しい娘が恐怖する姿を目の前で見てやろう」と 気付かれないようソロリソロリと近づいて もう少しで顔が見える所まで来ました。その途端 娘さんが振り向いて 室から飛び出し襲ってきました。樋口は ザンバラの白髪を振り乱し  般若のように化粧した顔の口を大きく開き 砥たての包丁を振り上げ 狐火の後光を纏って 宙を飛んできたものですから 驚いて逃げ出すと 茶釜の弦谷に転げ落ち 強く腰を痛めました。狐が「人間如きが狐をおどして ざまぁ見ろ」と 言って立ち去りました。「上加茂 原の村人より口伝」     奥谷愛宕神社: 上加茂薬師267番地より山道に入り右に廻り山道を登ると 谷に出会うので 左に廻ると 金比羅山の谷の中腹 北五34度51分22秒東経133度48分17秒の近くと推測する地点愛宕神社に見つかります  そこより下り道が有るので下ると 上加茂267番地に出ます 左の古墳:上加茂薬師267番地から山道に入り 直ぐ右に廻り  山に入り右に流れ柿方向に進むと 畑跡と思われる所の北緯34度51分15秒東経133度48分22秒の近くに 弥生時代後期のものと思われる古墳が見つかります 右の古墳:奥谷の流れ柿の下の畑を藪に向かうと北緯34度51分19秒東経133度48分25秒の近くに弥生時代後期のものと思われる古墳が見つかります。 茶釜の弦谷:愛宕神社の麓側の谷 薬缶の取っ手のような地形を 缶子の弦Kansu-no-turuと呼ばれます。

 

崖の上の狐と婆「奥州民話」Fox on the Cliff and Grandmother「Ou-syuu Folklore」

ある冬の日 宗介と言う男が 鶏が鳴く前に 町に買い物に出かけました。峠まで来ると 狐が 夢中になって ゴソゴソと 何かを掘り出していました。何度も 狐につままれていた宗介は「いつもの仇じゃ。脅してやれ。」と 思って たまたま落ちていた 固く凍った藁沓わらWaragutuを投げつけると 狐の尻に当たりました。天罰のような 不意に訪れた不幸に 狐が ギャと鳴いて 飛び上がる ともんどりを 打ちながら谷底に ダダッダと 転げ落ち  しこたま水を 飲みました。溺れかけた狐を 見て 宗介は「ざまぁみろ。人間様をこけにした罰じゃ。」と  ウキウキして 帰り始めました。ところが 不思議なことに 普段通り慣れているのに道に迷い  日が暮れる頃には 狐が落ちた崖の上に出ていました。困り果て 辺りを見渡すと 明かりの灯った家がありました。「提燈か 松明でも借りよう。」と 何度も何度も戸を叩いたのですが 中の人は反応しません。しかたなく「御免ください。」と 戸を開け入って見ると 耳が遠いのか 後ろを振り返りもせず 婆が 熱心にお歯黒を塗っていました。不気味な 光景の時が過ぎ 囲炉裏の火が絶える頃 お歯黒を塗り終えた婆が「カネはよう乗ったか。」と 裏返った声で言うと  異常に丈夫そうな 尖った真っ黒い歯を むき出し  目玉をグルグル回しながら 振り向きました。驚いた 宗介が 飛び下がると ダダッダと 谷底に転げ落ち 溺れそうになりました。狐が「人間如きが 馬鹿め。神様の遣いである狐様を 脅しおって.」 と 言いながら 去って行きました。onboumaru.com/132-ohagurobaba」  平成23年(2011年)9月6日