竹荘 袈裟きり地蔵 Dizou-bosatu slashed by a sword diagonally from the shoulder


 昔の明光庵竹荘88霊場 87番奥の院札所 加黄田地蔵堂Kouta-Dizou-dou hall・岩村カヲウタ妙光庵 Kaouta-Myoukou-an temple)近くは 人通りも少なく 寂しい所で、毎夜毎 妖怪が出たと 言われます。ある夜に、肥田五郎兵衛が 通り掛かると いつもの様に 妖怪が現れ、五郎兵衛が 剣の達人と見知らず 難儀をさせようと 道を阻み襲ってきました。五郎兵衛は 一刀のもとに 切り殺しました。話を聞いた村人が 翌朝見に行くと、袈裟懸けに切られた 地蔵が転んでいました。「竹荘 下市の村人のより口

 

肥田五郎兵衛の妖怪退治物語 Story of busting the monster by Koida-Goro-bei

 昔 竹荘惣社原は おおがっそぅじゃたけぇ 夜にぁ人っ子一人通る者はおらんかった。某地からすばろうしいなり)ぃした女子Onagoが 住み付いて茅Kayaで家ぇこさえ、川で蜆Sijimiぃ取ったり 野や山で 山野草ぅ取ったり 薬草を採って 遠くの町に売りに行って、小金ぅ溜めて生活しておった。ある日 怪我Kegaぁして 歩くんがやっとの旅の修行僧が 通り掛かり 道ぃ失うて惣社原へ迷い込んだ。真っ暗の中に 明かりが有ったんで 宿ぅ求めると、女子ぁ快く泊めて夕餉 (夕食)ぅ用意してやった。腹が閏うて 坊んさんは 気持ちが落ち着くと、現実の世界に戻ったんじゃ。狭ぇ家の中に 若ぇ女子 と若ぇ男が たった二人だけじゃ。何ぼう修行したと言うても まだ悟り切っとる訳じゃぁ無いし、女子ぁ満足なべべを着んで 項Unajiや足やこう見えるような形Nariぃしとるけぇ、男の欲望が 掻き立てられたんじゃ。女子ぁ「怪我ぁ 治るまで泊まりんせぇ」と 言うんで、坊さんは その気になったんじゃ。女子ぁ 翌日の坊さんの持成しぅするための米ぅ 町に買いに行こうと思うて 銭をぅ数え始めとった。坊さんは 布団の中で 錢の擦れ合う音ぅ聞いて 貧しい旅の辛さを振り変って「あの金が有りゃぁ どねえにくつろぐじゃろう」と 思うたんじゃ。坊さんは ついに欲望に耐え切れんで「お前も銭も俺の物じゃ」と 女子に迫ったんじゃが 女子は嫌がった。坊さんと女子が 組みおうて 首の絞め合いこになったんじゃが、男とは言え坊さんは 疲れとったし 怪我もし 栄養失調じゃったけぇ 野山歩きで鍛ぇたKite-eta強ぇ筋肉ぅ持つ女子と互角じゃ。せえで 二人は相打ちで おえんようになった。何やら 騒がしかったんで 村の者が 翌朝様子ぅ見に来たら、坊さんと 女子が  組合うて死んどった。村人 は 某地の女が 住み付ぃたんに 快う思うておらんかったけぇ「女子が やせ細った怪我ぁした坊さんを殺して 身包みMigurumi剥そうとしたんじゃ」と 思い込んで、坊さんを丁重に葬って 地蔵を立てて、惨ぇ事に 女を 粗末に扱ってほったらかしにしたんじゃ。女子ぁ悔しぅて悔しぅて あの世に行くに行けん。妖怪になって 地蔵に取り憑いたんじゃ。じゃけぇ 地蔵の顔は なんぼう彫り直しても 恨みに満ちておった。時が経って 村ぁ栄えて来て 惣社原にゃぁ住む者も出て来たんじゃが 作物が育たん。おまけに 地蔵の前ぅ通ると 妖怪に襲われ 怪我をさせられたり、ひょんな所へ迷い込まされたりして ぼっけぇそりゃぁもうよだったんじゃぁ。そねぇな所ぇ 旅の剣術修行者「肥田五郎兵衛」が通り掛かり、村人の難儀ぅNangyuuNangyuu聞いて 妖怪退治に惣社原へやって来たんじゃ。妖怪は案の定出て来て 肥田に襲い掛かる風に見せて、地蔵ぅ盾にして 戦いぃ いどんだんじゃ。それでも、肥田ぁ弐刀流の達人じゃけえ、目にも止まらん速さで 妖怪ぅ真っ二つに 一刀のもとに切ったんじゃ。すると妖怪は2匹になって襲って来たんじゃ。肥田もさるもの すかさず2匹を真っ二つに切り裂いた。んじゃ。すると 妖怪は4匹になった。せえで8匹に、16匹に、32匹に、64匹に、・・・・・・・・・・・・・ドンドン増えて物凄Mongeぇ数になっんじゃ。それでも 掛かって来 続けるけぇ、どうしょうもこうしょうもねぇ。身を守るため切りに切りまくる他ねぇ。

辺りぁ 妖怪まみれになって 霧みたいに漂い、妖怪以外何も見えんようになった。「もうおえん  死ぬる時が来た」と 肥田は覚悟を決めた。その頃になって ゆるゆると月が登って来たんじゃ。月の光が射すと 妖怪共は 透けて見えた。覚悟して閉じていた目を開くと、霧の煙幕のようになっとる妖怪の群れの後へ黒ぇ人みてぇな物が 薄らと見えた。肥田は「あの黒いのが妖怪の正体で  妖怪と思うとったんは 幻じゃ」と思い、せぇで 心ぅ鎮め蠢くUgomeku見みせの妖怪を無視し 技の全てを込めて黒い姿に 袈裟懸けに切りつけたんじゃ。ガツンと刀に手応が有って、その途端にあねぇに仰山Gyousan居った妖怪は消え失せた。肥田ぁ村に去んInで 村人に報告したんじゃ。村人ぁ翌朝、惣社原ぇ行ってみると 地蔵が袈裟懸けに切られておって、その日から  妖怪は出てこんようになり 地蔵の顔は慈悲深くなっていった。それを見て 村人は全てを悟ったんじゃ。せぇからは 死んだ地蔵に 女の魂を感じて、修復せず 切られた姿のまんまの地蔵を祀って敬っ)たんじゃ。そぎゃぁにしたら、村は米が良ぅ取れるようになったそうな。「竹荘 下市の村人のより口伝」を基にした物語  おおがっそ:お化けが出そうな程の茂み 某地・ぼうち:どこか解らない所 よそ者    すばろうしい:不景気そうな 貧乏くさい みすぼらしい    腹が閏う:腹いっぱいになる    くつろぐ:安心する  楽になる    形:姿 格好    べべ:着物の幼児語 おえん:駄目 出来ない 死ぬ なんぼうにも:どうしても 何回試みても 大した値打ちにも    ひょんな:変な    ぼっけぇ:大きな 酷い 素晴らしい等 ぎょうさん:沢山    よだつ:困る 苦労する    風に:ように    もんげぇ:物凄い いぬる:帰る その場からいなくなる    肥田五郎兵衛:寛文の頃 即ち江戸時代末期の人で、松山城の武士でした  原因は解らないのですが切腹をしました  秀吉刀狩り以降にも帯刀を許された剣豪でした この物語では 架空の人物   コイ田・コイタ・戀田・ヒダ・肥田:竹荘1778・2124番地等    肥田1787番地:北緯34度51分32秒東経133度40分43秒    戀田2080番地:北緯34度51分43秒東経133度40分22秒    戀田2098番地:北緯34度51分41秒東経133度40分30秒    肥田堂:竹荘1779番地     平成24年(2012年)3月26日