尾原 狐の下働き  assistant Fox


大国主命Oo-Kuninusi-no-mikotoを信ずる 千家尊福の弟子の宮司が 出雲大社教Izumo-ooyasiro-kyouの教義を 布教しようと、明治10年頃 旅に出ました。そして、新山の八神稲荷神社のある地にやって来て 穏やかな田舎町が 気に入り そこに住みたいと 思いました。下働きを 募集すると 働きたいと言う者は 居るのですが、難しい理論を 教えようとするので 誰も下働きを 続けられる者が 居りません。そこへ 山奥で 貧しい生活をし  里の子供達と 遊びたいと思っていた 可愛らしい利発そうな少年が やって来ました。宮司は すらりと 背の高い 面長の少年に 人間離れした魅力を感じ 大喜びしました。宮司が「わしは 出雲大社教の宮司じゃぁ」と 名乗ると少年は「居ずも大家代 今日の偶時蛇」とは  何の事かと 尋ねるのです。宮司は「居ても居なくても 出雲じゃ  偶然じゃぁのうて 宮司じゃ  小僧ながら 教えを乞うたぁ 感心じゃ  生死一つながら幽顕一如Yuuken-Itinyoの道じゃぁ」と 言いました。少年は「少子で 一人ながら 言うけん一女の実ちゃ言うのんは 何じゃ」と 尋ねると宮司は「出雲じゃぁ 昔から人ぁ 霊止hitoなりと 言う  出雲弁で 子ぅ孕む事ぅ 霊が止まらっしゃったHii-ga-tomarassyataと 言うて喜ぶ   古事記や 日本書紀じゃぁ 伊勢神宮天照大御神が  取り仕切る 見える世界を 顕世Utusyoと言う   出雲大社の大国主大神が 取り仕切る 見えん世界を 幽世Kakuryoとか 幽冥Yuumeiと 言う   幽契Rei-no-tigiriと言う約束がある  見える世界は 生きている世界の事  見えない世界は  死んだ者が住む 世界の事  二つの世界は 別々にあるように見えるが  同じ世界じゃ  人間は 霊止Hito 親神産靈Musuhi 幸魂Saki-mitamaと 奇魂Kus-imitama恩頼Mitama-no-Huyu 御魂の恩頼Mitama-no-Huyuじゃ  先祖の霊を 人間は 引き継いでおる  小僧の霊ぁ 先祖の霊じゃ   親神と言うのんは 最初の神様じゃ   天地の全ての物ぅ造ったんじゃ  大国主命の事じゃ  結ぶの神 産の神Ùbu-no-kami 結びの神じゃぁ  神様ぁ 荒魂Ara-mitama 和魂Nigi-mitamaの姿をしておる  荒魂は 悪さをする者に 祟る時の姿じゃ  和魂は お祈りする人に 恵みをくださる時の姿じゃぁ  和魂にゃぁ 幸魂 奇魂の姿をとる時が あるんじゃぁ  幸魂は 運が良ければ  願を叶えてくれる神の姿じゃ  奇魂は 奇跡の力で  願いを叶えてくれる神の姿じゃ  恩頼と言うのんは 神様や 天皇様が 下さる恩恵や 加護や 威力の事じゃ  解ったか」と まくし立てたのです。少年は「解らん そぎゃぁな小難しい事を 言うけぇ 下働が 逃げるんじゃ  ところで 働かしてくれるんか くれないんか」と 尋ねました。宮司は「そうじゃった 雛hiyokkoじゃが 飯炊きや 掃除ぁ 得意か  得意なら 働いてくれえ」と 言うので 下働きをする事になりました。 まあ その少年の働きぶりは 大変な物で、茶を求めると 湯が沸く間もなく 熱い茶が 出されたり、沢庵を見て 卵焼きの話をすると 卵の買い置きが無いのに 卵焼きが 膳に並ぶ 等 宮司が頼む事は 頼む前から用意されていて、頼まない事 でも 必要な事は 済ませているのです暇が あると 近所の子の遊び相手に成り、宮司が 暇を 弄ぶMoteasobuと 狐に化かされた人の話を 聞かせたり、語りかけると 話し相手を してくれるのです。宮司は この働き者の少年が どうして こんなに 狐に詳しいのか、何故に 不思議な力を持っているのか 知りたくなりました。宮司は 豆腐 等ないと 知っていたのに「今日は 合間食いに 京都名物の豆腐の味噌汁ぅ 食いてぇのう」と 無理な 頼みをしてみて、台所を 盗み見たのです。何やら 色々の食材を 頭に乗せては 料理している様子です。暫くして「そうおっしゃられると 思って 昨晩 京都迄 行って 豆腐ぅ 買ぅて 参っておりました  どうぞ 召し上がられぇ」と 膳を 運んできました。

宮司は 不思議な事が出来る小僧の正体を 見たくなり「今日は 宮司の集まりがある  たまにゃぁ 昼寝でもして 帰りぅ 待ちなされ  夕方にゃ ぁ仲間の宮司が 仰山Gyousan来るけぇ いつもより 綺麗に掃除して、50人分の膳を 作っておいてくれ」と 言付けました。出掛ける振りをして 隠れて見ていると 子供達と 遊びに出かけた後 夕 刻に 帰ってくると チチンプイプイと アッと言う間に 掃除を済ませ、50人分の膳を 揃えました。それでも 流石にSasugani疲れたのか グーグー鼾Ibikiを かいて 寝始めたのです。熟睡し始めると 毛が生え 口は尖り 尻尾Sippoが 生えて来たのです。宮司は「小僧は狐じゃ  でも 泥団子や 馬の糞を 食わされた訳でもないし、肥坪の風呂へ 入れられた訳でもない  沢庵で 卵焼を作り 井戸水で お神酒を作った位じゃ  近所の子供の面倒見も良いので 氏子の者も 大喜びじゃ  暫く 居候させとこう」と 思い、今帰ったふりをし「小僧 小僧 今 帰ったぞ  客はこんようになった 料理は明日 子供達を集め 食べさせてやってくれ  風呂は 湧いておるか  へんな臭いは せんじゃろうのう」と 言うと「お帰りなさい 柚子Yuzuと 菖蒲Syoubuを 採っておきました  香り湯を 楽しんでください」と 小僧は 言うのです。そして 年月が流れ 小僧は 凛々しい顔立ちの良い青年になりました。宮司が「お前は 本に良う気が利くけぇ 褒美に そろそろ良い嫁を 見繕ってやろう。それとも 山へ帰って嫁さんを 見つけて来るか  なんなら猟師に 捕ってこさせようか  隣の宇迦御魂命ukanomitama-no-mikotoの眷属にしてもらって やろう  いつから 尻尾が生えたんじゃ」と 切り出すと 少年は 慌てて尻を 探りますが 尻尾は無く 真顔になって「わしの正体を 知っていて可愛がってくれたんですか  わしより太夫さんの方が ずうっと気が 利きます」と 感謝しました。そして一人と 一匹は仲良く村のために尽くし  村の子供達と 楽しく遊びました。「三谷野呂の百怪談」https://ja.wikipedia.org/wiki/荒魂・和魂www.izumooyashiro.or.jp/hitobito/taisyakyo/・出雲大社教」 

八神稲荷神社:尾原土井下モ405-1番地 北緯34度54分58秒東経133度45分28秒https://www.jinja.in/single/85643.html秋の大祭は隣接する出雲大社教教場と共催します 昔新山地方は凶作が続き餓死する者が多く出しました。そこで旧新山城主(1772年)が 出雲の国から 八上比売命を 勧請 奉祀し 五穀豊穣の神として 祈りました  元治元年(1864年)12月社殿で火災のため類焼しました  翌2年正月に 現在地に 奉遷し 八神大明神と 称し、五穀成就 災害防除の神として 信仰されています。 昭和10年4月に 社殿 幣殿 拝殿を 改築たしました https://www.okayama-jinjacho.or.jp/search/17527/ 平成24年(2012年)1月22日


和尚さんと狐 Buddhist monk and fox :

昔 山寺に 和尚と小坊主が 住んでいました。ある良く晴れた秋の日に 檀家の法事を済ませ 帰る途中に 子狐を拾い、抱き上げても 嫌がらないので 飼ってやる事にしました。人になつき  檀家の者も 可愛がって 育てていると、突然 本寺の僧都が 訪ねて来たました。お茶や ご馳走で 持成しますが 油揚げを 食べるくらいで 他の料理には 手も付けず「御寺には 先頃から狐を飼っていると 評判だが 見せて頂けないか」と 言うのです。小坊主が 子狐を 連れて来ると 子狐は 初めての人なのに 僧都の膝に チョコンと座り、僧都も「良う肥えておる  皆に可愛がられているようじゃ」と 愛おし気に 声を掛け 頭を撫で 頬ずりまでするのです。和尚は「僧都さまは 以前に お会いした時より 何となく 女ぽいし  こんなに獣好きでなかったように 思う」と 不思議がりました。すると僧都が「実は今日 訪ねて来たのは 内密な話が あったからじゃ  小坊主を 払って下され  表に文箱を持たせた従者を 待たせておる  文箱を 持って来てはくれまいか」と 言うので 小坊主を 退室させ 門前に出ました。しかし 従者達は 見つからなかったので 仕方なく部屋に戻ると 僧都も 子狐も 消えていました。いくら探しても 見つからず、障子や 座布団を 丁寧に調べると 黄色い毛が 付着していました。「やられた  わしとしたことが 狐につままれた ワハッハ」と 腹を抱えましたとさ。和尚さんと狐 - 岐阜県の昔話 | 民話の部屋 (minwanoheya.jp)」 平成24年(2012年)1月22日