豊野 蜂谷    ソーギン様 Miss.sougin-sama

蜂谷という所に 大金持ちの酒屋が ありました。財産を 蓄えている場所を 家族にも 知られたくなくて、人知れぬ山中に 6つの瓶に入れ、女中のお銀に 運ばせ 埋めました。お銀に 強く口止めしましたが、不安のあまり 秘密を守るため お銀を 殺しました。主人は その日から 体調を失いました。薬石も 効果なく、法者の祈祷も ご利益を 得られませんでした。お銀の祟りとして お銀を殺した短刀を 地中に埋め、檜を植えて その傍に 祠を 造り お銀を 祀りました。これが、げんぎん様です。「吉備中央町の伝説(1)」「村人口伝」


ソー銀様物語 tale of Miss.Sougin

 昔 藤井家は 庄屋であり鉢屋Hatiyaと言う 酒屋を 営み大金持ちでした。粋な 黒塀に 見越しの松の母屋の他 5棟の屋を並べ、大きな 土蔵を 備えていて、黒塀の外に 立派な井戸が ありました。鉢屋の主人は 気の弱い所のある 強欲者で、財産を 泥棒に 狙われる事や、家人が 持ち出す事を 酷く恐れていました。そこで、家族にも 内緒で どこかに 隠してしまおうと考えました。ある日 金めの物を7つの甕に 詰め 大八車Daihati-gurumaに 乗せ 蔵から 持ち出しました。藤井家の奉公人に 気立ての優しい誠実な お銀と 呼ばれていた娘が おりました。とても働き者だったので 家人 や奉公人 皆Minnaが 寝静まった頃まで 拭き掃除を していました。鉢屋の主人は 門を 静かに開け 井戸の傍を 通り、街道に 向かいました。井戸の陰で 座り、雑巾絞り をしていたお銀に 気が付きませんでした。こんな 夜中に ご主人は 何をしに出かけるのか 不思議に 思ったお銀は、闇に 消えそうになる大八車の後を 付けました。

天田Tendaの丘にに 付くと、大檜の後ろに 主人は 穴を掘って 甕を埋めていました。埋め終わると 鶴嘴Turuhasiや 鍬(Kuwaの音が 消え静まり返ったので、お銀の呼吸の音も スースーと 大きな音のように 感じられました。主人は 汗を拭き 辺りを見回し、人の気配を 感じ取りました。案の定 見つかるのを 恐れ 震えているお銀に気付き、お鋭い目をして お銀に 近付いて来ました。主人のただならぬ気迫に お銀は 体が竦み 動くに 動けなくなり 殺されると 覚悟しました。目をつむり 成り行きを 静かに待っていると、主人は「黙って 殺されてくれ  そうして呉れれば 神様として 祠を建て 祀ってやる」と 思いがけない 静かで 迫ったのです。「神様になれる」と 聞かされた時、厳かな夢心になり 小首を 傾けてしまいました。この頃の人達にとって、神や 仏は 特別に 尊い存在であったからです。主人は お銀が 承服してくれたと 信じ 胸を一突きに しました。しかし 約束を 守らず お銀を 土深くに埋めました。すると 主人は その日から 体調を失いました。薬石も 効果なく、法者の祈祷も ご利益を 得られませんでした。お銀の祟りとして お銀を 殺した短刀と 一緒 遺体を墓場に 葬り 神事を尽し  檜を植え 祠を立て祀りました。すると 主人は お銀の祟から 解放されました。それに 感謝し、子子孫孫 昭和の初め頃まで ソーギン祭りを 絶やさず 続けられました。祠が 崩れ(た折、供養石を 作り変えたそうです。いまも ソーギン様の周囲は 檜が 植樹されています。「豊野蜂谷の村人より口伝」   ソーギンサマ:北緯34度51分59秒東経133度41分50秒 多くの軍記にみられるように、語りべの立場により 同じ伝説でも 内容が異なります  ソーギンは 宗銀や 僧銀と 書くと思われているが  葬銀と 書くのだと 語りべの婦人は 語りました 蜂谷公会堂:北緯34度51分52秒東経133度41分52秒 甕が埋められたと思われる丘:北緯34度51分51秒東経133度42分28秒 蜂屋の財宝は未だ発掘されていません 平成23年(2011年)7月24日