尾原 狐の教訓 Fox learned a lesson


尾原の男が 戦争に 行き、さんざん弾丸を 受けましたが、無事に 帰ってきました。しかし 戦争経験のストレスから 抜け出す事ができず、苦悩を お酒で 誤魔化していました。そんな訳で 本来は 酒好きではなかったのですが、世間の人に 大変な酒好きだと 思われていたのです。この日も 酒屋に入り浸りしていました。すると 物凄い別嬪Beppinさんが 柳腰で 斜向Hazumukaiに 座って、親切にも 酌をしてくれました。玉の鈴のような悩ましげな声で「飲ましてもらっていいですか」と 言うので、男は 鼻の下を長くして 奢ってやる事にしました。女は 矢鱈と油揚げを 肴Sakanaに注文し、神様に 捧げる様な 美味しい酒ばかり注文して 飲んだのです。男は 白粉Osiroiの匂いを 嗅ぐと 気分が高まると言う 少し変態的な傾向があったので 厠Kawayaへ行く振りをして 女の首筋の匂いを嗅ぎました。すると 性癖のたまものか、白粉の臭いに混じって  普通の人には わからない程の かすかにに 狐の臭いがするのです。「八神稲荷神社Yakan-Inari-jinjyaの使いの狐は 酒好き 油揚げ好きじゃ  不作続きで 誰も油揚も お神酒も 奉納しなくなった  偶にはTamani-ha酒が飲みたくなって  若付いたなりをして お人好しのわしを 騙して 只酒を 飲もうとしておる  その手に乗るか」と 思いました。そのまま 厠に行って 誰にもに気付かれないよう 裏木戸から抜け出し「どうせ 狐が葉っぱか 小石か 皿かで 贋金Niseganeでも作って 会計するじゃろう」と 思い、狐と酒屋のやり取りを 覗き見しました。連れの男が 見えなくなったので 酒屋の主が、女に 飲み代を 請求しています。女狐は 男を信じていたので お金を用意しておらず、木の葉も 小石も持ち合わせていず、お皿には 好物の油揚げが 乗っていました。女は 木の葉でも拾って お金を作ろうと 思い「厠に行たい」と 申し出ましたが、先の男の事もあるので 酒屋の主は 許してくれませんでした。酒屋は女狐の手を引いて、お役人に引き渡そうとしました。女は 狐の姿に戻り 酒屋の手を 咬もうとしましたが、酒屋は 元お侍で 武道の達人でしたので あっさりと 取り押さえられてしまいました。「何でもするから 許してください」と泣いて 頼むと、酒屋の親父Oyajiは、お尻ぺンペンや 鼻ピンや 頬ぺツネツネをし からかった後、辛い辛い 水仕事や 掃除をさせる 等 散々こき使い 許してやりました。ある日 その男が 八神稲荷神社の本殿 に 五穀豊穣を 祈願しにお参りしようとした時に 子狐に 合いました。狐の子は 頬白で 女狐の子供と 解ったので、男はあの女狐に謝ろうと 思い声を掛けました。子狐は 遊んでもらえると思い、喜んで「お母さんに聞いて来る」と 言って母親の所に行きました。

物陰から覗うと 子狐が「首に怪我をした 小父さんが夘堂坂を 登って 麓から来たよ  遊んでもらっても 良いかのう」と 母親に尋ねました。すると母狐は「駄目  駄目  あの人は 狐を 馬に乗せたような 嘘付よ  狐を騙すけぇ 近付いちゃぁおえん  あの男の顏を 思うばぁで きゃぁ糞悪ぃ」と 子狐に 教えていました。それを聞いて男は「稲荷に祟られては どぎゃぁにもこぎゃぁもならん」と 思い、次の日 出直し 詫び状を添え 沢山の油揚げ 小豆飯と お神酒を 稲荷神社に 奉納しました。するとその年から男の田畑は 豊作となり、一匹と一人は 下心なく程々の酒飲み友達になりました。お酒召さぬ神はない。「尾原屋八神稲荷神社で正装していた村人より口伝」を基にした物語    下尾原の八神稲荷神社:北緯34度54分56秒東経133度45分35秒 尾原の狐:尾原の狐は 尻尾を 掴と化けの皮が 剥がれるとされ、狐に 咬まれるとそこが 腐るとされます 狐の子は頬白狐の子は面白Turasiro子が 親に似る  子狐の毛色は 母の毛色に似ている ウドフザコ夘堂坂卯堂坂:尾原480・482-492番地 今昔物語集100「高陽川の狐、女と変じて馬の尻に乗りし話」:仁和寺の東に 高陽川Kaya-gawaという川があります。夕暮れになると 若娘が立って「その馬の尻に 乗せてよ わたしも京の方に 行きたいの」と 頼むので馬上の人が 娘を乗せてやると 五百メートルばかりで コンコンと 鳴きながら 逃げ去りました。こうした悪戯が 幾度も続いたので 御所の滝口の武士達の間で も評判になりました。一人の若い武士が「おれだったら 小娘を 搦め捕れる」と言うと 仲間の武士達が口々に「お前には 無理だ」と 言いました。翌日の夜に 若武者は 独り馬に乗り 高陽川に行き 悪戯娘を 馬の尻に乗せてやり 用意してきた縄で 娘の腰を縛り 馬の鞍に結びつけました。「ひどい」と 娘が言うと「今宵は おまえを 抱いて寝る  逃げられて 堪るか」と 答え暗くなった道を 戻って行くと、火を灯した車を 連ねた行列が 大声で 先払いをしながらやって来たので「誰か高貴な方の行列だろう」と 思って それを 避け遠回りして 土御門Tuti-mikadoまで行きました。待ち受けさせていた その侍の従者 十人ばかりに 手伝わせ娘の縄を解いて 馬から引き下ろし、腕を掴んで 門から入り 滝口の詰所まで 連れて行きました。詰所では 同僚たちが 待っていて、小娘が「もう許して 怖い人が大勢」と 泣いているのを 許さず 連れ込むと、同僚達が 取り囲み弓を 一斉に構えました。明かりの中で 掴んだ腕を放すと 娘は狐になって 鳴きながら逃げだしました。すると居並んでいる筈の者達は かき消え、火も消えて 真っ暗闇になりました。武士は 慌てて従者を 呼んだのだのですが 部下も 馬もいず、闇をすかして見ると 来た事もない死者を 風葬する鳥辺野清水寺でした。狐に 騙されたと解り 肝も心も震えあがらせて 夜半に家に 帰り着いたのですが、次の日は 死んだようになって寝込んでしまいました。三日目の夕方 やつれ果てて 若い武士が滝口の詰所に 姿を見せると「あの晩は 狐を捕らえたのか」と 同僚が言うので「病気になって行けなかった 今夜こそ行く」と 益もない意地を張り 屈強な部下を連れ 再び高陽川迄 行きまさした。川の畔に この前と違う娘が 立っていて「馬の後ろに乗せて」と 言うので 乗せてやり、縄で 娘をきつく縛り 一条大路を 部下に 厳重に見張らせながら 暗くなった道を帰ってゆきました。土御門で馬を 下り、泣く小娘の髪を掴んで 滝口の詰所の同僚の前まで  引きずりだしました。暫くの間 ひどく責めつけると ついに狐の正体を 現したので、たいまつの火で 毛もなくなる程に 焼き、矢で 何度も射た後「二度と人を 化かすな」と 言って放してやりました。その後 十日程たって若い武士が 馬に乗って高陽川に行ってみると 前の小娘が 重病人のような様子で 立っていました。「馬のうしろに 乗らないか」と 声をかけると、「乗りたいけど、乗らない。焼かれるのがつらいの。」と 答えて消え失せました。今昔物語集100「高陽川の狐、女と変じて馬の尻に乗りし語」 | やけい (ameblo.jp)」 「巻二十七第四十一話 少女に化けた狐を後ろに乗せて走った話 | 今昔物語集 現代語訳 (hon-yak.net)」 平成23年(2011年)9月3日