小森 川戸の恋 Love in Kawado-landing place


昔 昔、旭川ダムができるずっと前の話です。「三重」と言う小森の娘と 従妹の「輝」が 江与美の滝の瀬に 住んでいました。小森は  岡山から旭川 を登って来る 高瀬船の終点でした。岡山からは 海産物や着物や 工業製品等が 運ばれ、小森から は 薪炭 煙草野菜等が 運ばれ、下りの物流が主でした。小森の川戸には 飲食店 髪結い 履物屋 運送屋等があり、三重は食べ物屋の下女をしていました。

たまに店を 訪ねる高瀬舟の船頭の「正吉」に 淡い恋心を 抱いていました。純情に加えて 美貌に 自信が無かったので、思いを伝える事が 出来ないでいました。正吉が 店の暖簾をくぐると、動きもぎこちなくなり、無口になったのです。力仕事で腹を空かした正吉に 大目に飯を盛ってやる事が 愛の表現でした。正吉は 大盛の茶碗にとても喜び 感謝の言葉を 掛けてくれました。三重にとって 喜ぶ正吉の笑顔を 見るのが嬉しく、また この瞬間だけは 言葉を交わせ 幸福に 浸れる瞬間でした。ある日 三重は「江与美のかり叉」の話を 良くしてくれていた  恋の達人と に恋の手解きを 相談しました。輝は「三重ちゃんは初心Ubu過ぎるのよ  船頭相手ならちいたぁ悪ぶらにゃぁ振り向いてもくれまぁ  襟足ぐれぇ見せてやりねぇ 着物の裾を引いたり  特に正吉は 上男じゃもん   引手数多じゃ  尚更じゃ」と教えてくれました。しかし三重には、そんなはしたない事は できる筈がありません。それでも、輝の言葉が背中を押して ついに心の内を正吉に伝えました。正吉は「ブスとは遊ぶ気もねえ  口ももロクスッポ 利けん癖に」と 突き放しました。悩み苦しんだあげく 三重は告白を 後悔し 川に身を投げました。意を決し飛び込んだものの 水が鼻や口に纏いつくと、反射的に もがき苦しみました。溺れかけた時 高瀬舟が と炭俵を積んで 通り掛かりました。船頭は 炭俵を川に投げ込み 川に飛び込み 娘を助けました。炭俵を浮にして 船に 娘を引き上げて見て、三重だと解り「つまらん女子Onagoう助けたもんじゃ」と 呟きました。しかし、目の前で 人が死ぬのは 嫌なので、必死に三重を抱え 腹を締め付け 水を吐かせ上向きに 寝かせ 胸を圧迫して 蘇生を試みました。船頭の手慣れ た技術で 娘は 止まっていた息を 吹き返しました。未だ 意識が戻らず 夢の世界で真実の片言を 語り続けていました。正吉は ずぶ濡れで はだけた着物の隙間から見える 働き者の証である 張りを持つ太腿や 襟首に 衝動を受けました。三重が気付くと 正吉は 乱れた着物を 優しく整えていてくれる所でした。三重は 正吉の顔を 恥ずかしそうに見詰め 一言「有難う」と言うと、正吉は なぜか 緊張し無口になって 体が強張っている自分に 気付きました。「これが真の恋じゃ 三重が いつも自分に見せていた姿じゃ」 と知った正吉は「こんど カリマタで合ってくれる」 と告白したのです。それからは高瀬舟が着くと小森の川戸に明るい若い男女の呼び合う声が 響くようになりました。「昭和30年(1955年)三谷野呂の 百怪談」  平成24年(2012年)3月11日

江与味のカリマタ伝説 Story of Karimata in Eyomi

第1話 昔、江与味の村頭とに 落どこから来たかよくわからない武者が居りました。召使いに「お前ぁ弓の名人じゃけぇ 向こうに見える本宮山の山頂の獲物ぅ捕ってきんされい」と命じました。召使いは 思案の末、村頭の向いの旭川ぞいの山頂と松尾の後にある龍王山(落合町境の山)に股がり、弓を引きしぼり、ヒョウ―と矢をは放つと 獲物に命中したそうな。「跨って狩」が 「狩で 跨った」と 言伝えられ、「かり股」となったとさ。(旭町誌) 第2話 昔、かり叉より上の地区(現在の畝滝ノ畝落合町吉)の者は、かり叉坂を通って浜の高瀬舟の川戸へ荷物を下ろしたり 買物に行ったりしていた。ある時、近所同士の若者が浜へ用足しに行っての帰り道、この坂へ通りかかりました。長い坂なので 休憩する事になり 草に座って 世間話をしている内に、偶然に手が触れ 電気が走るような衝撃を受けました。以前より 悪気を感じていなかった二人でしたので 恋いに落ちたのです。濃い男女の仲となり、結婚してオシドリ夫婦の見本となったので、いつからとなく 地域の人は この坂を「かり叉」と言うようになったと言うそうです。(旭町誌)家里とは,故郷や妻の意 雁が長旅をして羽を休める場所の意かも 借りとは遊女を品定めする為に呼び出す事 雁は どちらか一方が死ぬまで「つがい」の関係を維持する夫婦愛の強い鳥とされます 第3話 昔々、江与味に どえらい分限者がいたそうな。ある時 分限者の屋敷を 修験者が 訪ねて来て 屋根を見つめ「お屋敷の屋根を 赤子が 這うておる  奥方の私生活が 乱れている 証拠じゃ 身を慎まれぇ  赤子が祟って 無限の財産も あっけのう無くなろう」と言ったそうです。しばらうすると この分限者は 貧乏になったそうです。 銭を借りに借ったのかなぁ 以上の「かり叉伝説」の地は、雁股山 ともいわれている。(旭町誌) www.cyerry.net/~eyomi/11.minwa/minwa01.html」 雁股は 二股に別れた鏃の事で、地形では 二股の分かれ道に 名付けられます。