富永 狸のホロセ nettle rash of  raccoon dog


富永の山奥に 猿と狸とカワウソが 住んでいました。一軒屋の離れ家で、塩と豆と座布団を 売っている人がいました。その店は 留守がちなので 狸は「あそこの店はあまり売れんけぇ留守がちじゃ 盆が近い 今日も 誰もおらんけぇ 連れのうて 塩と豆と座布団を 盗ろうじゃぁねぇか」と 猿とカワウソを誘い、盗みを 働きました。狸は「カワウソさん  あんたは 魚捕りが得手じゃ  捕った魚に 塩を 振って 食べねぇ  おいしいけぇ」と カワウソに 塩を渡しました。「お猿さん  あんたは 木登りが 得手じゃ  木の上に 座布団を 敷いて昼寝をしんされぇ  気持ち良いぞ  わしは 一番少ない残り物の豆を貰う」と 言って猿に 座布団 をやり 狸は豆を 持ち帰りました。カワウソは 心弾ませ塩を 背負って魚捕りに 出かけ 川に入ると 塩は 水に 溶けてなくなってしまいました。カワウソが「岸に置いていたら 盗まれると思ったのが 失敗じゃた」と がっかりして 猿を 訪ねました。猿は 木から落ちていて「座布団を 片手に持って木に登っていたら 登りたがえて 幹から滑り落ち 腰を打った 痛ぇ  背負って登れば よかった」と落ちる時に 枝に引っかかり ズタズタに破れ た座布団に 座り込んでいました。カワウソは「塩も 座布団も 役にたたなんだ  せめて 狸さんの 豆を 分けて貰おう」と 狐を誘い、狸を訪ねる事にしました。

その頃 狸は 豆の上に 体をこすり付け、豆を 毛の間に埋 め込んでいました。カワウソと 狐が それを見つけ「何をしとるんなら  豆の上で のたうっておって」と尋ねると、狸は 見つかった事に 驚きながらも「助けてくれぇ  あの豆を食ったら、体中に豆みたい なホロセが できたんじゃ  痒ぃの痒ぅねぇのそりゃ-モンゲ-痒いーーい」と 答えました。落ちている 豆を カワウソが 拾おうとすると「おえん  そりゃぁワシのホロセじゃ  触るとホロセがうつるぞ」と 脅すのです。カワウソと 狐は「きょうてぇ事じゃ 狸さん  冷たい様じゃが おいとまさせてぇな」と言って 走って逃げ帰りました。すると狸は「うまい塩梅(に 騙せた  うめぇ  うめぇ」と 豆を拾い集め、一粒 一粒、おいししそうに食べたそうです。「富永の村人の物語より」加茂川町の昔話(岡山私立幡小学校読書クラブ)によく似たお話が載っています。 ホロセ:蕁麻疹の症状の一種で痒みを伴う膨らみや瘡蓋Kasabuta状の吹き出物     平成28年(2016年)8月1日